完ぺきなシナリオの反動で、テレビが「家電の主役」から降りた?

2012年11月26日 11:00

 JEITA(電子情報技術産業協会)がまとめた2012年1~9月の民生用電子機器国内出荷統計によると、この時期の薄型テレビの出荷台数は470万台足らずにとどまった。2012年の通年出荷台数の見こみは600万台から700万台で、2011年の半分にも満たないことになる。

 「一昨年、昨年は特殊な状況にあったから、今年の落ちこみはある程度予想できたのですが、それにしても悪すぎますね」。ある家電量販店の関係者が漏らす「特殊な状況」とは2011年7月に完全移行した地上デジタル放送のこと(東北地方は除く)。前出の統計でも地デジ化を前にした2010年は約2520万台、2011年は2000万台に迫る出荷を記録した。特に地デジ化直前の駆けこみ期と直後の追いかけ期にあたる2011年6、7、8月だけで、2012年の通年出荷台数に匹敵する。地デジ化という国策のおかげでテレビだけはリーマンショック以降の不況を回避できた形となっていたわけだが、地デジ化が完ぺきに完了した反動があまりにも大きかったということだろうか。「すばらしい商品も出てはいます。付加価値の高いテレビやより高機能でクリアな映像を実現している新商品もあります。しかし……」。

 年末年始の商戦に向けて大手メーカーからは続々と新商品が発表になってはいる。その一方で件の家電量販店のみならず、今や電気店でのテレビ売り場は縮小傾向にある。「すでにテレビは日本の御家芸ではなくなってしまった」と話す専門家もいるが、製造するメーカー側と国内の購買マインドとのミスマッチを埋める画期的なアイデアが生まれてくるのは、はたしていつになるのだろうか。地デジ化のような「国策」は、しばらく期待できる状況ではない。