サプリメント市場に広がるオールインワン商品

2012年11月26日 11:00

 昨年来ブームとなったレスベラトロールや、先日ポーラ化成が皮下脂肪低減作用を確認したと発表したアロニアベリーなど、毎年のように新たな注目を集める成分が登場するサプリメント市場。サプリメントを含む健康食品市場は約2兆円とも言われ、テレビでも新聞でも、その広告を見ない日はないといえるほど生活に浸透しつつある。

 サプリメントといえば、従来は配合成分名がそのまま商品名になるような、単一成分の商品が大半をしめていた。しかし数年前からは、メインとなる成分を補助するような成分も配合した商品が増加。近時ではその傾向はさらに進み、訴求ポイントに応じた成分を多数配合したオールインワンともいうべき商品が数多く市場に投入されている。消費者が、求める効用に応じて成分を選択していた状態から、効用をダイレクトに選択する傾向が強まってきたといえるであろう。

 例えば、セシールの子会社であるアルマードが12月16日から発売するサプリメントには、13種類の美容成分が配合。従来品よりも10倍以上微粉砕された卵殻膜が10%以上増配合されているという訴求ポイントはあるものの、卵殻膜の他にも、アセロラ、モロヘイヤ、米胚芽、梅肉エキス、セラミド、エラスチン、鶏胸肉抽出物等の自然由来成分が配合されており、美容のためのトータルサプリメントとなっている。また日清製粉グループの日清ファルマからは、13種類のビタミン・9種のミネラルからイチョウ葉エキスやコエンザイムQ10、レスベラトロールまで28成分が1袋で摂取できるサプリメントが11月11日から販売されている。これにより、同じ成分を毎日・長期間続ける必要があるにも関わらず、実感のないままサプリメントを渡り歩く「サプリメント放浪者」への訴求を図っている。

 消費者委員会による「消費者の「健康食品」の利用に関する実態調査」によると、75%もの人が健康食品を現在利用している、もしくは利用したことがあり、また、その約6割がおおむね満足しているという。しかし、「不満」又は「やや不満」と回答した人のうち、8割以上の人が「期待したほどの効果がなかった」と回答している。成分を前面にアピールするのではなく、訴求ポイントに合う成分を多数配合したサプリメントの普及は、こうした不満に真っ向から応えようとするものであろう。同調査によると、健康食品への支出は約7割が月額3000円未満である。しかし20代・30代をみると1000円未満と回答した人の割合が他の世代に比べて高くなっている。50代以上の約3割がほぼ毎日健康食品を食しているというから、今後しばらくは市場も維持・拡大を続けるであろうが、いずれ市場が縮小する可能性を含んでいるということである。新たな成分が現れては消えることで維持・拡大を続けていた健康食品市場において、オールインワンの商品が増える一方で、そこにかける金額が低下していく。これは、メーカーの淘汰が本格的に始まる序章と言えるのではないだろうか。