防衛装備移転三原則の制約緩和で防衛産業育成?

2022年11月27日 09:02

 国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議は今月22日に岸田文雄総理に反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有などを含めた報告書を手渡した。

報告書の中には「防衛産業育成のために、防衛装備品の移転に課している防衛装備移転三原則や運用指針などによる制約を『できる限り取り除き』積極的に他国に移転できるようにすること」までも求めていた。

 「政府だけが買い手である構造から脱却し、海外に市場を広げ、成長産業として、防衛部門に積極的に投資する環境をつくることが必要」などとし『同志国等』への防衛装備品という事実上の武器輸出が「同志国などとの関係強化や地域の平和と安定に貢献する。積極的平和主義の理念とも合致する」とした。

 積極的平和主義は安倍晋三元総理が「わが国の平和と安全は我が国一国では確保できない。国際社会の平和と安定、繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく」などと提唱してきたものだが、防衛産業という名の軍需産業育成を図るために防衛装備品輸出を広く認めることが平和憲法の理念に照らし整合性のとれるものなのか。

 外務省は「国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念及びこれまでの平和国家としての歩みを堅持しつつ、防衛装備移転三原則に基づき防衛装備の海外移転の管理を行っている」と『防衛装備移転三原則』の規制・運用指針を遵守して対応してきている。防衛産業育成のためにこれを緩和してよいのか、『防衛装備移転三原則』の原点を踏まえ、政府が出す結論次第で、国会での熟考・議論が求められよう。(編集担当:森高龍二)