2023年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が採用される。インボイス制度で仕入税額控除を適用するには適格請求書が必要となり、適格請求書発行事業者は課税事業者のみのため、年間売上高が1000万円未満で免税業者であった零細事業者への不利益が懸念されている。適格請求書発行事業者の登録は任意であるが、免税業者のままでいた場合、取引の停止や納入価格の引き下げを要求されるケースも危惧される。帝国データバンクの調査では半数超えの企業が業務上の都合などを理由に免税業者との取引を行うとしている一方で、4割の企業が対応を決めかねている状態のようだ。
11月21日、帝国データバンクが「インボイス制度に関する企業の意識調査」(調査期間:10月下旬、有効回答:1万1632社)の結果レポートを公表している。これによれば、「取引先の登録状況について把握しているか」と聞いた結果では、「確認済み」との回答は3.8%にとどまっているが、「現在、確認中」が25.4%、「制度開始までに確認予定」45.8%となっており、7割超の企業が制度開始までには確認する意向のようだ。確認作業の遅れについては「免税事業者の多くは個人事業主が多く、対応を決めかねている方が多いため、自社として早くからの準備は不可能」(各種商品小売)といった事情もあるようだ。また、「特に確認しない」とする企業も14.5%存在する。
制度開始後の免税事業者との取引については、「取引しない」との回答は7.5%にとどまった。「経過措置期間は取引する」は24.9%、「経過措置期間にかかわらず取引する」 26.2%となっており、少なくとも経過措置期間においては51.1%と半数超の企業が取引を行うと回答している。自由記述を見ると「中小企業としては、免税事業者と取引しないと業務に支障をきたすため取引せざるを得ない」(金属容器等製造)との声も聞かれる。また、「分からない」との回答も41.5%と多く、現時点では免税事業者との取引に関して対応を決めかねている企業も多いようだ。企業からは「一人親方や個人経営の協力会社は重要な戦力であり、今後取引をやめるわけにもいかず、現在検討中である」(舗装工事)という声も聞かれる。
レポートは「制度開始まで1年を切ったなか、引き続き政府には広く情報が行き渡るよう、丁寧でわかりやすい情報発信が求められている」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)