インボイス、登録進まず。個人事業は15%のみ。負担増への反発も背景

2022年11月30日 06:59

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東京商工リサーチが「インボイス制度の登録数動向」調査。インボイス制度登録率は10月末で、37%、個人企業は15%と低迷

 インボイス制度の登録が難航しているようだ。インボイス制度は2023年10月1日から施行となっている。インボイス制度で消費税納税者が仕入税額控除を受けるためには仕入先から適格請求書を受領する必要がある。仕入業者が適格請求書を発行するためには「適格請求書発行事業者」の登録が必要で、23年10月1日からこの適用を受けるためには23年3月31日までに「登録申請書」を提出する必要がある。既に期日まで半年を切っているが、10月末での登録率は4割にも満たず、特に負担増が懸念されている個人企業では2割にもほど遠い低迷ぶりだ。

 11月10日に東京商工リサーチが「インボイス制度の登録数動向」調査の結果レポートを公表している。これは東京商工リサーチが国税庁の公表データと総務省「経済センサス」の企業数から10月末の登録率を独自に算出し、それを分析したものだ。これによれば、10月末の登録率は37.1%と4割に届かず、なかでも個人企業の登録率は14.9%と低迷しており、レポートは「登録への躊躇(ためらい)が広がっている」としている。

 10月末の登録数は143万3500件で、10月のみでは22万6447件と3カ月連続で月間最多を更新し増加傾向であるものの、その多くは法人企業で、法人の登録率は60.5%と6割を超えている。しかし、個人企業は依然として15%にも満たず、その結果、全体では37.1%という低調ぶりだ。10月末での法人の登録は9月末から9.1ポイント上昇した一方で、個人企業は2.7ポイント増と加速感が見られない。国税庁の2020年度統計年報の課税事業者数で登録率を試算すると、法人が55.4%、個人企業は26.8%となる。「免税事業者から課税事業者への移行も考えると、個人企業の登録の低調さが際立っている」とレポートは指摘する。

 個人業者は免税業者が多いが、免税業者が登録をしなかった場合に懸念されるのが取引先から取引を打ち切られることだ。東京商工リサーチが8月に行ったアンケートでは、制度開始後に免税業者と「取引しない」と回答した企業の割合は9.8%で、半数近くは「未定」となっている。取引継続の場合でも、取引先との力関係から取引要件の変更などで不利な立場に立たされることも懸念されている。レポートは「課税事業者への移行に伴う納税義務の負担増が登録遅れにつながっている」とし「個人企業は負担増への反発も大きく、新たな対応策が必要な可能性も出てきた」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)