1985年の男女雇用機会均等法の制定を受けセクシャルハラスメント防止の気運が高まった。その後、部下を威圧的に指導するなどパワーハラスメントも社会問題化し、2020年にはパワーハラスメント防止措置が企業に義務づけられ、22年4月からは中小企業も適用対象となっている。ハラスメント対策の歴史は長いものの、その特定や対応は難しく十分な効果が出ているとは言いがたい現況だ。パーソル総合研究所の調査・推計によれば、ハラスメントを理由とした離職者は約86.5万人おり、そのうち57.3万人がハラスメントについて会社に伝えておらず、多くが表面化せずに被害者が職場を去るという結果になっているようだ。
11月18日、パーソル総合研究所が「職場のハラスメントについての定量調査」(調査期間:8~9月、調査対象:20~69歳の就業者2万8135名)の結果レポートを公表している。これによれば、21年年間のハラスメントを理由とした離職者数は、簡易推計で約86.5万人、このうち57.3万人は離職理由を会社に伝えられておらず、約3分の2がハラスメント発生件数として把握されていないことになる。
業種別に離職者数を見ると、「宿泊業、飲食サービス業」が18万人で最多、次いで「医療、福祉」が14万人、「卸売・小売業」13万人と続いている。「職場で過去にハラスメントを受けた経験」については、34.6%が「ある」と回答しており、具体的内容としては、「仕事について批判されたり、言葉で攻撃される」が65.1%で最多、次いで「乱暴な言葉遣いで命令・叱責される」60.8%、「小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」58.8%と続いている。会社側の対応については、何らかの対応をするまでに至った割合は17.6%のみで、82.4%は未対応となっている。
一方、上司側の行動を見ると、「飲み会やランチに誘わないようにしている」75.3%や「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」81.7%などとハラスメント回避行動をとっている者が多くなっている。こうした上司の行動は、部下に上司との心理的な距離感を感じさせ、上司との距離感を感じている部下ほど成長実感を得られていないという結果にもなっている。上司側も距離感の取り方に苦慮しているようだ。上席主任研究員の小林祐児氏は「『防衛』的なハラスメント施策だけでは成長を阻害している。『育成』的な施策の両輪が必要」とコメントしている。(編集担当:久保田雄城)