自民党税調が防衛費増額の財源を賄うのに法人税額に「5%程度」上乗せする案を検討しているとの報道に経団連や経済同友会関係者から「賃上げの流れに水差す」「人件費抑制につながる」などの意見が出ているが、武蔵野大学EMCの秋元祥治教授は「法人税に上乗せといっても、すべての企業が追加で納税をすることになる…わけでは決してない。黒字に対して課税されるのが法人税(均等割を除く)」と指摘。
秋元氏は「21年3月に公表した『国税庁統計法人税表』によると、赤字法人は181万2332社、全国の普通法人276万7336社のうち、赤字法人率は65.4%。会社の2/3は赤字決算で、法人税を納める状況でない。今回の上乗せで負担が増えるわけではありません」と説明し、上乗せがいかにも賃上げの流れに水を差すかのような法人税への増をけん制する発言に、水を差すことにはならない旨を投稿した。むしろ、中小企業でいかに賃上げできる環境をつくるかこそが大事だ。
21年度法人企業統計年報によると金融を除いた全法人の内部留保(利益剰余金)が516兆円に達している。このうち資本金10億円以上の大企業約5000社での内部留保額は256兆円にもなり、全法人の内部留保の半分に及んでいる。一方で18年度~21年度の3年間で増えているのは内部留保の額と株主配当だった。従業員給与は横ばい状態で、そもそも賃上げできる体力がありながら賃上げしてこなかったことが浮き彫りになっている。(編集担当:森高龍二)