2011年10月17日 11:00

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ヤマハ発動機が開発したヤマハ電動車イスをパソコンなど外部機器で操作するための研究開発機関向けキット「アカデミックパック」。今年11月に開催される「つくばチャレンジ2011」で、数チームが使用予定という。

 ヤマハ発動機が、研究開発向けに開発した「アカデミックパック」が一部研究者の間で話題を呼んでいる。これはヤマハ電動車イスをパソコンなど外部機器で操作するための研究開発機関向けキットで、対象は教育機関、研究機関の教職員・学生となっている。

 「アカデミックパック」を開発するきっかけとなったのが、自ら考えて行動するロボットの実証実験を目的とした技術チャレンジの大会「つくばチャレンジ」。人々が生活行動を行う町の中で、定められたコースを「いかに安全・確実に動くか」を競う催しで、2007年から茨城県つくば市で開かれており、毎年たくさんの大学や企業のチームが参加している。同社は「つくばチャレンジ2008」に、軽量型電動車イス”JWX-1”を使用した、自立移動電動車イスロボットで参加。公道での1kmの自立走行という課題を達成した。「設定された1kmあまりのコースを完走するのは、容易ではありません。町中には段差や歩行者、雨や風といった複雑な要件が散在するため、それをロボット自身が正しく判断し、適切な行動をとるのはそう簡単ではないのです」と担当者。その言葉通り、同大会で1kmあまりのコースを完走できたのは、ほんの一握りでしかなかったという。

 これを境に、防水対策など、屋外で走行することを想定して販売されている電動車イスを、「自立移動ロボットのベース車両に使用したい」という要望が数多く寄せられた。しかし本来の用途とは異なるため車両の内部情報のほとんどは外部に出力されておらず、研究用途として使用するには困難だったという。そこで、これらの要望に応えるために、電動車イス”JWX-1”をベース車両として利用し、車両の内部情報を外部に出力することが可能なシステム「アカデミックパック」を開発するに至ったという。

 「当社は移動具の専門家です。しかも車イスは屋外で日常的に使うものですから、動力ユニットから足回りまで、ユーザーよって鍛え抜かれています。この信頼性が各研究機関のお役に立てるならと、販売をさせていただくことになったわけです」と担当者。「アカデミックパック」は、発売直後から「改造の手間とリスクが減り、本来の研究に専念できる」と評判を呼び、すでにいくつかの研究機関への納入も完了。その中の数件については、今年11月に開催される「つくばチャレンジ2011」への出場も決まっている。

 同社はこの「アカデミックパック」により、移動具のプロとしての信頼性を各研究機関に役立てもらうことが、先行開発分野の活性化につながると期待している。