毎年300億円を超え税金から支払われる政党への交付金。1994年以来、赤ん坊から高齢者まで国民1人年間250円計算で税金から政党に拠出され続けてきた。
国民は制度創設の目的を忘れてはならない。献金企業・献金業界・献金団体が時の政権と癒着し、政策を「献金」で歪めるようなことにならないように企業団体献金を禁止し、その代わりに作られたのが「政党交付金」制度だった。現況は目的通りになっていない。実効性を上げるには政治献金は『個人献金に限り認める』とする制度設計にすることが必要だ。
1994年に政党交付金(政党助成金)が創設された背景を思い起こしてほしい。戦後最大の贈収賄事件のリクルート事件が発端だった。1984年~86年にかけてリクルート社の会長がリクルート関連のリクルートコスモス未公開株を政治家や官僚らに賄賂として譲渡し、86年秋に店頭公開されて、譲渡者の譲渡益は約6億円に上った。
政界ルートで当時の藤波孝生元官房長官が受託収賄罪で有罪(執行猶予4年懲役3年)、池田克也元衆院議員も同様に有罪(同)判決、安部晋太郎自民党幹事長の私設秘書らは略式起訴された。90人を超える政治家が株譲渡され、森喜朗氏は約1億円の売却益を得たとの報道も残っている。こうした贈収賄事件が発端で政官業癒着を断つために企業団体献金を禁止。その代わりとして国民が税で負担する「政党交付金」制度が生まれた。癒着の温床となる企業団体献金を無くすためだ。
ところが政治家個人への献金は2000年に廃止されたが、政党は未だに政党交付金と企業・団体献金の両方を受け取っている。これでは政官業癒着の温床はなくならない。早期に政治資金規正法を改正し「企業・団体献金完全禁止」にすることが実効性をあげることになる。
岸田内閣は新しい資本主義社会実現を掲げ、経団連提案を次々実行、あるいは実行するための経済政策を今月末にも打ち出す。経団連も「企業の政治寄附は企業の社会貢献の一環として重要性を有する」などと公然と語り「会員企業・団体に対し、自主的な判断に基づき、日本経済の次なる成長のステージに向けた政策を進める政党への政治寄附を呼びかける」(10月10日)と事実上、自民党への政治献金を呼び掛けると表明している。
経団連は自民党の政策を「高く評価」し、その評価の主なものには(1)原発の再稼働加速と運転期間の延長、次世代革新炉・核融合研究開発の推進(2)150兆円超の官民GX投資、成長志向型カーボンプライシング構想の検討(3)研究開発税制の維持・拡充、NISA制度の抜本的拡充などをあげる。
課題に挙げて政策推進を促している内容をみると(1)労働時間をベースとしない処遇を可能とする法制の見直し(2)株式報酬の活用拡大に向けた制度整備(3)企業活動の活性化への税制改正(投資減税や国際課税等)さらに「防衛力強化、こども・子育て政策等での国民全体が負担する財源のあり方検討など。
岸田政権の経済政策がこうした路線の上を走っていることは政策発表の中でさらに浮き彫りになるだろう。百歩譲って政党への企業団体献金を現状のまま容認するのであれば「政党交付金」は廃止すべきだ。
制度創設目的を果たさず、税金を政党に投入し続けることは許されることではない。交付金を受ける資格を有しながら交付申請しないで「政党交付金」制度を廃すべきとしている政党は現況では日本共産党だけというのも、いかがなものか。政党は政党交付金制度が誕生した目的を自覚し、責任を持って、政党交付金の在り方、企業団体献金の在り方を再点検し、実効性ある制度にすることだ。これは政党の責任といえよう。(編集担当:森高龍二)