電機8社の2023年4-9月決算

2023年11月26日 09:37

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12月20日上場廃止予定の東芝は中間期最終赤字

半導体の不振は長引いてもIT関連は好調

 電機業界大手の富士通、日立製作所、パナソニックホールディングス、日本電気、三菱電機、シャープ、ソニーグループ、東芝の2023年4~9月期(第2四半期)中間決算が出揃った。中国を中心に半導体市場の需要低迷、在庫調整が続いているものの、国内のシステム投資が回復しIT関連のセグメントは売上拡大。中間期業績は各社まちまちだが、業績見通しは期末、来期に向けて期待が持てる内容になっている。なお、東芝は上場企業としてこれが最後の決算発表になった。

■富士通は中間期も通期も増収減益だが増配予想

 富士通の4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上収益は0.4%増の1兆7118億円、営業利益は55.6%減の447億円、税引前利益は53.9%減の601億円、四半期純利益(最終利益)は47.5%減の378億円で、わずかに増収でも大幅減益という決算だった。それでも中間配当は前年同期から10円増配の130円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は18.1%だった。

 成長の主力、サービスソリューションは前年同期比増収増益。国内受注は118%伸びて好調。国内でDX・モダナイゼーション商談が大きく伸び、開発標準化の進捗で採算性も改善している。前年同期比でハードウェア・ソリューションは減収減益、ユビキタス・ソリューションは減収増益。しかし半導体需要が低調で顧客サイドの在庫調整が長引いたデバイス・ソリューションの大幅減収減益が業績の足を引っ張った。連結ベースではPFUの業績不振の悪影響が続いている。

 通期業績見通しは、サービスソリューションは引き続き力強い拡大を期待しているが、デバイスの回復遅れ、収益性悪化を織り込んで下方修正。デバイスの本格回復は2024年度になるとみている。売上収益は500億円引き下げて2.6%増の3兆8100億円、営業利益は200億円引き下げて4.7%減の3200億円、当期利益(最終利益)は100億円引き下げて3.3%減の2080億円。修正前の増収増益予想から増収減益予想に変わった。配当予想に修正はなく、期末配当は前期から10円増配して130円、予想年間配当は20円増配して260円としている。

■日立は上方修正しても通期減収減益見通し

 日立製作所の4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上収益は8.4%減の4兆9600億円、調整後営業利益は0.3%増の3254億円、税引前四半期利益は14.1%増の3220億円、四半期利益(最終利益)は21.2%増の2091億円と、減収増益決算だった。最終利益は前年同期の2ケタ減益から2ケタ増益へ転換している。中間配当は前年同期から10円増配の80円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は40.2%だった。

 セグメント別では、コネクティブインダストリーズは半導体関連を中心に投資抑制の影響を受けて増収減益だったが、デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティは増収増益だった。

 デジタルシステム&サービス、日立エナジーの大型事業を中心に受注が堅調に推移しており、通期業績見通しを全ての利益項目で上方修正したが、営業収益は3500億円上積みしても15.9%減の9兆1500億円、当期利益(最終利益)は200億円上積みしても19.9%減の5200億円で、通期では減収減益になる見通し。期末配当予想、年間配当予想は「未定」としている。なお、10月18日に発行済株式数の1.18%にあたる1107万3400株、約1000億円の自己株式を取得・消却している。

■パナソニックは中間期も通期も大幅最終増益

 パナソニックホールディングスの4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は1.4%増の4兆1194億円、営業利益は28.8%増の1928億円、税引前利益は34.6%増の2243億円、四半期純利益(最終利益)は168.7%増の2883億円で、わずかに増収でも損益は前年同期の大幅減益から大幅増益に転換し、最終利益は前年同期比で約2.7倍になった。中間配当は前年同期から2円50銭増配の17円50銭。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は62.6%だった。

 セグメント別ではインダストリーが大きな減収になっても、オートモーティブ、コネクト、車載電池の販売が増加し、円安効果もあいまって増収で着地した。利益面は戦略投資の固定費の増加、原材料高騰の影響を、価格改定、合理化、円安、アメリカのインフレ抑制法にかかる補助金(IRA補助金)の計上などの相乗効果で増益幅が拡大している。なお最終利益は、パナソニック液晶ディスプレイの特別清算、債権放棄に伴う法人所得税費用減という特殊要因で増益幅が拡大している。

 通期業績見通しは、中国市場の家電、半導体、情報通信インフラの需要低迷が長引くことによるくらし事業、インダストリーのセグメントの販売減に加え、IRA補助金の会計処理の影響も見込んで下方修正。売上高は1000億円引き下げて0.3%増の8兆4000億円、営業利益は300億円引き下げて38.6%増の4000億円、税引前利益は修正なく43.8%増の4550億円、当期純利益は修正なく73.3%増の4600億円で増収、大幅増益。期末配当予想、年間配当予想は「未定」としている。

■日本電気(NEC)は中間期で増収、大幅増益

 日本電気(NEC)の4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上収益は6.4%増の1兆5488億円、営業利益は101.9%増の279億円、税引前利益は32.6%増の319億円、四半期利益(最終利益)は225.0%増の129億円と増収、大幅増益。最終利益は前年同期の大幅減収から大幅増収へ転換し約3.2倍になった。中間配当は前年同期から5円増配の60円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は9.2%だった。

 セグメント別では、ITサービスは国内の企業向け、官公庁向けの需要が旺盛で収益好調。金融向けの大型案件が寄与している。社会インフラもグローバル5Gの構造改革の効果が出たテレコムサービス、大型案件を獲得し受注40%増のANSとも増収増益だった。

 通期業績見通しは修正なし。売上収益は好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画し2.0%増の3兆3800億円、調整後営業利益は7.0%増の2200億円、Non-GAAP営業利益は11.7%増の2200億円、Non-GAAP当期利益は5.4%増の1400億円と増収増益を見込んでいる。配当予想も修正はなく、期末配当は前期から5円増配して60円、年間配当は前期から10円増配の120円としている。

■三菱電機は中間期も通期も増収、大幅増益

 三菱電機の4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は8.5%増の2兆5384億円、営業利益は68.7%増の1358億円、税引前四半期純利益は55.0%増の1597億円、四半期純利益(最終利益)は60.7%増の12002億円と増収、大幅増益だった。中間配当は前年同期から6円増の20円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は46.2%だった。

 セグメント別では、ライフ部門のビルシステム事業、空調・家電事業の空調機器が「脱炭素化」の流れもあり国内外とも販売好調。インダストリー・モビリティ部門は半導体を中心にFAシステム事業で需要が減少しても自動車機器事業は「電動化」関連製品が順調に伸びた。インフラ部門は交通分野の需要回復がみられた社会システム事業、国内設備投資が堅調な電力システム事業は増収、防衛・宇宙システム事業は大口案件の減少で減収となっていた。セミコンダクター・デバイス部門はパワー半導体の需要増が大きく牽引。ビジネス・プラットフォーム部門はシステムインテグレーション、ITインフラサービスが伸びた。全体的に為替の円安効果が業績に効いている。

 通期業績見通しは修正なし。売上高は3.9%増の5兆2000億円、営業利益は25.8%増の3300億円、税引前当期純利益は21.5%増の3550億円、当期純利益(最終利益)は21.5%増の2600億円で増収、大幅増益。予想期末配当、予想年間配当は「未定」となっている。

■シャープは中間期営業赤字でも通期損益は黒字化見通し

 シャープの4~9月期決算(日本基準)は、売上高は7.9%減の1兆1582億円、営業損益は58億円の赤字、経常利益は67.2%減の30億円、四半期純利益(最終利益)は47.5%減の49億円。前年同期と比べると減収減益で、営業損益は黒字から赤字に転じた。中間配当は前年同期と同じく無配。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は49.6%だった。

 中間期(上半期)の損益は2022年度の下半期から大きく改善し、経常損益、最終損益は黒字化。7~9月期の損益は営業損益、経常損益が5四半期ぶりに赤字から黒字に転化した。セグメント別ではスマートオフィスが291.1%の大幅営業増益、ブランド事業が73.1%の営業増益で、損益の改善に寄与している。国内の白物家電は大幅減収。テレビは国内需要の回復遅れ、中国での価格競争激化が販売に影響したが、高付加価値モデルの販売が伸びている。スマホもフラッグシップ機の売上比率が上昇し収益性が高まっている。

 通期業績見通しは業績が期初の想定内で推移しているため修正なし。売上高は0.5%増の2兆5600億円、営業利益は400億円、経常利益は400億円、経常利益は390億円、当期純利益(最終利益)は100億円で、前期は赤字だった営業損益、経常損益、当期純利益が黒字化する見通し。配当予想は修正なしで予想期末配当、予想年間配当は「未定」。業績見通しの明るさはやや増しているが、無配をいつ脱することができるか。

■ソニーは通期見通し上方修正でも増収減益

 ソニーグループの4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高及び金融ビジネス収入は19.3%増の5兆7922億円(過去最高)、営業利益は29.7%減の5160億円(中間期としては7期ぶりの減益)、税引前四半期利益は25.9%減の5336億円、四半期純利益(最終利益)は23.1%減の4176億円で、増収ながら大幅減益決算だった。中間配当は前年同期から5円増配して40円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は47.4%だった。 

 セグメント別では前年同期比で、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、イメージング&センシング・ソリューション、金融、その他が増収、エンタテインメント・テクノロジー&サービスが減収。ゲーム&ネットワークサービス、音楽が営業増益、エンタテインメント・テクノロジー&サービス、イメージング&センシング・ソリューション、金融、その他が営業減益。最近まで好調だった半導体や金融で足を引っ張られたこともあり、「コンテンツ(ゲームソフト、音楽、映画)で利益を稼ぎ出すソニー」という傾向が、より強まっている。

 通期業績見通しは上方修正。売上高及び金融ビジネス収入は2000億円上積みして13.0%増の12兆4000億円、営業利益は修正なく10.2%減の1兆1700億円、税引前利益は200億円上積みして9.0%減の1兆1600億円、当期利益(最終利益)は200億円上積みして1.8%減の8800億円と、増収減益の減益幅が圧縮される見通しになっている。配当予想は予想期末配当、予想年間配当は「未定」で修正はない。

 コンテンツに強いソニーだが映画分野は通期下方修正。その要因として「ハリウッドのストライキ」を挙げている。映画の劇場公開日、テレビ番組制作日程の後ずれ、宣伝の制約などの影響が出るとしている。金融の下方修正の最大の要因はソニー生命の大幅減収減益で、市況の変動による変額保険の運用益の減少、損益の悪化を見込んでいる。

 十時裕樹社長は「成長領域のゲームや音楽は増益だが、世界的な景気減速や地政学リスク、グローバル経済の分断などに継続して注意を払うことが必要だ」と述べている。

■12月20日上場廃止予定の東芝は中間期最終赤字

 東芝の4~9月期決算(米国基準)は、売上高は6.1%減の1兆4976億円、営業利益は713.2%増の222億円、税引前四半期純利益は394億円の赤字、四半期純利益(最終利益)は521億円の赤字。全体に減収で、前年同期は黒字だった損益が赤字になった。大幅営業増益を、キオクシアホールディングス株の売却に伴って持分法損益で690億円の赤字を計上した営業外損益の悪化が打ち消した。中間配当は前年同期から60円減配して無配とした。

 セグメント別では、エネルギーシステムソリューションは増収、営業損益黒字化、インフラシステムソリューションは増収、大幅営業増益、ビルソリューションは大幅減収、営業赤字、リテール&プリンティングソリューションは増収、営業損益黒字化、デバイス&ストレージソリューションは減収、大幅営業減益、デジタルソリューションは減収、営業減益、その他は減収、営業赤字だった。

 運転資金の改善によりフリーキャッシュフローは増加。大型案件を受注して受注高、受注残は堅調で、前途に明るさも見えている。

 通期業績見通しは修正なし。売上高は4.8%減の3兆2000億円、営業利益は0.5%減の1100億円で、税引前当期純利益、当期純利益(最終利益)は、キオクシアホールディングスの業績予想を入手していないため予測値を策定できないという理由で公開していない。予想期末配当、予想年間配当は、TBJH株式会社による普通株式の公開買付けが成立し2023年12月20日をもって上場廃止となる予定なので、公表していない。(編集担当:寺尾淳)