自動車業界大手の三菱自動車、トヨタ自動車、SUBARU、マツダ、スズキ、日産自動車、本田技研工業の大手7社の2023年4~9月期(第2四半期)中間決算が出揃った。EV化などで世界を引っ張ってきた中国市場の景気後退の出口が見えず業績悪化が懸念されたが、フタを開ければ三菱の最終利益を除けば増収増益で、トヨタ、マツダ、日産は3ケタの営業増益で着地。為替の円安効果が出ているので全7社が通期業績見通しを上方修正し、通期は三菱の最終利益を除けばオール増収増益の見通しとなっている。
トヨタの完全子会社となったダイハツを加えた自動車8社の4?9月の世界生産台数は前年同期比7.4%増の1247万台で、半導体不足の問題が緩和されて生産が回復。国内生産は19%増の415万台、海外生産は2%増の832万台となっていた。
■三菱自動車の最終減益は前期の反動
三菱自動車の4~9月期決算(日本基準)は、売上高は14.9%増の1兆3308億円、営業利益は23.1%増の1041億円、経常利益は19.4%増の1209億円、四半期純利益は18.4%減の674億円と最終利益以外は増収増益だった。中間配当は無配だった前年同期から5円増配の5円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は47.2%だった。四半期純利益は前期の中間期が281.8%の大幅増益だったので、その反動減が出たという面がある。
通期業績見通しは上方修正している。売上高は700億円上積みして15.9%増の2兆8500億円、営業利益は300億円上積みして5.0%増の2000億円、経常利益は400億円上積みして15.4%増の2100億円、当期純利益は300億円上積みして17.0%減の1400億円と、最終利益を除けば増収増益。配当予想に修正はなく、期末配当は前期と同じ5円、予想年間配当は5円増配して10円としている。
想定為替レートを米ドルで1ドル=139円とし、前回予想より8円、円安方向に修正。前回予想と比べて円安効果が営業利益を398億円押し上げる見通しだが、最重要市場と位置づけるタイ、ベトナム、インドネシアなど東南アジア市場に関してはインフレや金利上昇によって景気の先行きが不透明で販売が伸び悩むとみて、販売台数見通しを13%下方修正した。世界全体でも販売台数見通しを5%下方修正して86万8000台としており、それが通期の最終減益の最大の要因となっている。
■トヨタ自動車は最終3ケタ増益と好調
トヨタ自動車の4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、営業収益は24.1%増の21兆9816億円、営業利益は124.2%増の2兆5592億円、税引前四半期利益は92.0%増の3兆5215億円、四半期利益(最終利益)は121.1%増の2兆8594億円と、大幅増収増益だった。前期の中間期の減益から大幅増益へ、損益が大幅に改善した。中間配当は前年同期から5円増配の30円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は65.5%だった。最終利益が約2.2倍で、営業利益、最終利益は過去最高を更新した。
通期業績見通しは上方修正。営業収益は5兆円上積みして15.7%増の43兆円、営業利益は1兆5000億円上積みして65.1%増の4兆5000億円、税引前利益は1兆8600億円上積みして51.3%増の5兆5500億円、当期純利益は1兆3700億円上積みして61.6%増の3兆9500億円で大幅増収増益。2022年3月期の2兆8501億円を超え、2年ぶりの最高益更新、日本企業で歴代第2位となる。期末配当予想、年間配当予想は公表されていない。
「レクサス」の通期生産台数は期初予想の1010万台(前期比11%増)を据え置いたが、全体の生産台数増、車種構成の改善、値上げ効果などが1兆7300億円の営業増益要因。想定為替レートを16円円安方向に見直し1ドル=141円とした。円安効果は期初予想から1兆1800億円も上積みされている。原価低減も進め、原材料価格、エネルギー価格、人件費などのコスト増をカバーできるとみている。宮崎洋一副社長は「収益構造は着実に改善している」と述べた。
■北米が回復したSUBARUは最終利益前期比ほぼ2倍
SUBARUの4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上収益は26.4%増の2兆2134億円、営業利益は68.3%増の1858億円、税引前四半期利益は88.2%増の2264億円、四半期利益(最終利益)は93.9%増の1509億円と大幅増収増益だった。中間配当は記念配当10円込みで前年同期から10円増配の48円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は47.1%だった。中国での販売は39.9%減と不振だったが、多目的スポーツ車(SUV)の「フォレスター」が好調な北米市場での販売回復などで全世界販売台数が17.8%増となり、円安効果とあいまって業績の押し上げ要因になっている。
通期業績見通しは上方修正。売上収益は4500億円上積みして23.2%増の4兆6500億円、営業利益は1200億円上積みして57.0%増の4200億円、税引前利益は1600億円上積みして65.3%増の4600億円、当期利益は1100億円上積みして59.7%増の3200億円と大幅増収増益。期末配当予想は前期から記念配当10円込みで10円増配して48円、予想年間配当は前期から記念配当20円込みで20円増配して96円としている。
もっとも、通期の利益水準は2016年3月期の最高益の約7割にとどまる。販売構成の改善、円安による増益効果は望めても、原材料、エネルギー、人件費などのコストアップの克服が課題になっている。
■マツダは通期売上高を3000億円上方修正
マツダの4~9月期決算(日本基準)は、売上高は41.1%増の2兆3172億円、営業利益は134.6%増の1296億円、経常利益は62.4%増の1792億円、四半期純利益は25.9%増の1081億円と大幅増収増益だった。中間配当は前年同期から5円増配の25円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は63.6%だった。
グローバル販売台数は中国では前年同期比7.6%減と不振だったが、ヨーロッパは34.1%増、北米は39.0%増、国内は20.5%増と好調で、トータルで19.9%増だった。
通期業績見通しは前回予想の減益予想から一転、最高益予想へ上方修正。売上高は3000億円上積みの25.4%増の4兆8000億円、営業利益は700億円上積みの76.1%増の2500億円、経常利益は820億円上積みの36.6%増の2540億円、当期純利益は400億円上積みの19.0%増の1700億円と増収増益。配当予想に修正はなく、期末配当は前期と同じ25円、年間配当は前期から5円増配の50円としている。
中国や東南アジアでの販売が不振でグローバル販売台数見通しを5月の前回発表から1.0%引き下げたものの、為替の円安効果や新型車の販売増が寄与するとみている。
■スズキは増収増益だがインドの需要に不安あり
スズキの4~9月期決算(日本基準)は、売上高は15.6%増の2兆5644億円、営業利益は39.6%増の2294億円、経常利益は25.3%増の2409億円、四半期純利益は12.4%増の1293億円と増収増益だった。中間配当は前年同期から5円増の55円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は53.8%だった。主力のインドで多目的スポーツ車(SUV)が伸び、それに半導体不足の解消により生産の正常化、原材料価格の落ち着き、価格改定、為替の円安効果が加わって、売上高、営業利益、経常利益は、中間期としては過去最高だった。
通期業績見通しは上方修正。売上高は2000億円上積みの12.0%増の5兆2000億円、営業利益は700億円上積みの22.7%増の4300億円、経常利益は800億円上積みの17.6%増の4500億円、当期純利益は300億円上積みの8.5%増の2400億円で増収増益。最終利益は従来の5%減の2100億円から一転増益となり、過去最高益更新予想。なお、前回予想では期末配当50円、年間配当100円だった配当予想は「ウクライナ、パレスチナなど今後の世界情勢が不透明」という理由で「未定」に変更している。
世界四輪車販売は6%増の318万8000台に上積みした。新型車投入効果、為替の円安の追い風に、原材料調達の改善努力が相まっての好業績予測だが、成長市場のインドでは新排ガス規制対応で各社が値上げを行ったことで小型車中心に自動車需要に陰りが出ており、それがインドでの販売の先行きを不透明なものにしている。
■日産自動車は営業利益倍増、最終利益4.6倍
日産自動車の4~9月期決算(日本基準)は、売上高は30.1%増の6兆633億円、営業利益は115.0%増の3367億円、経常利益は109.6%増の4126億円、四半期純利益は359.4%増の2962億円で増収増益。営業利益、経常利益はほぼ倍増。最終利益は約4.6倍となった。北米市場での生産・販売台数が大幅増加。国内で「セレナ」の販売台数が前年同期比62%増になり、1台あたりの売上高が前年同期比14%増になるなど車種構成の改善に円安効果が加わって、好調な業績を残している。中間配当は無配だった前年同期から5円増配して5円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は75.9%だった。
通期業績見通しは上方修正。売上高は4000億円上積みして22.7%増の13兆円、営業利益は700億円上積みして64.4%増の6200億円、当期純利益は500億円上積みして75.8%増の3900億円で増収増益(経常利益見通しは非公表)。配当予想も修正し、期末配当は前期と同じ10円、年間配当は5円増配の15円としている。
中国市場は小売販売台数が中間期で前年同期比24.4%減、通期で23.4%減になる見通しなど状況が厳しいが、2026年までに中国を電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド(PHV)を中心に10万台規模の日産ブランド車の輸出拠点とするなど、意欲的な中国事業戦略を発表している。
■株式分割実施の本田技研工業は実質年間174円増配
本田技研工業の4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上収益は18.9%増の9兆6093億円、営業利益は53.6%増の6965億円、税引前利益は70.5%増の8792億円、四半期利益(最終利益)は82.1%増の6163億円。品質関連費用計上の影響はあったものの、北米市場の回復による生産・販売台数の増加、商品価値向上に見合った価格改善などにより、最終減益だった前年同期から一変して増収増益となった。中間配当は前年同期から27円増配して87円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は66.2%だった。
通期業績見通しは上方修正。売上収益は1兆8000億円上積みして18.3%増の2兆円、営業利益は2000億円上積みして53.7%増の1兆2000億円で過去最高更新、税引前利益は2100億円上積みして58.6%増の1兆3950億円、当期利益(最終利益)は1300億円上積みして42.8%増の9300億円と増収増益。期末配当予想は前期から4円増配の29円だが、2023年10月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っているので、実質12円増配の87円。予想年間配当は単純比較ができないが、実質54円増配の174円に相当する。
通期では中国やベトナムなどアジアでの 市場環境が厳しく、収益力の高い二輪車の世界販売台数は1263.5万台から1227.0万台へ下振れしても、車両の仕様改善による単価上昇、収益体質強化の効果、為替の円安効果などが寄与するとみている。(編集担当:寺尾淳)