モノを創る楽しさと悦びを子どもに伝えるのが使命

2011年10月07日 11:00

 「製造業を営む企業として、モノづくりの面白さを次世代へ継承していかなければならない」という熱い思いから、ヤマハ発動機は、子供向けの様々な体験イベントをここ数年、ヤマハコミュニケーションプラザ(静岡県磐田市)にて数多く開催している。

 その中で、毎年夏休みに実施して6年目を迎える「親子デザイン講座」には、今年も数多くの参加者が集まり、好評のうちに幕を閉じた。同講座は、同社ならではのモノ創りの技術を生かした子ども向け体験学習の一つ。企画から準備、インストラクターまで、実際にヤマハモーターサイクルの造形を手がけるGKダイナミックスの現役プロダクト・デザイナーが担当し、「乗り物の色と模様を考えよう」「粘土で乗り物を作ってみよう」という二つのコースを通じて、グラフィックデザインや造形の仕事が体感できるよう、さまざまな工夫が盛り込まれている。

 たとえば、「粘土で乗り物を作ってみよう」コースの場合、子どもたちはいきなり粘土をこね始めるわけではない。最初に「誰と・どこに行く・どういう名前の乗り物か?」を考え、アイデアが決まり次第、それを絵にする、という工程を伝える。そしてようやく粘土の出番となる。企画・コンセプトワーク、スケッチ、そして造形。ここまでの手順は同社の仕事の進め方と同様であり、また、粘土を電動バイクの木製キットに被せ、デザイン画を見ながら足したり削ったりして模型に成形する工程も、デザイナーが製品のデザイン検討のために作るクレイモデルと同じだという。

 「こういう仕掛けを子どもたちがどのくらい理解してくれるかはわかりませんが、ふつうのお絵描き教室や工作教室とは違う”何か”を感じ取ってくれたらうれしいですね」と、インストラクターの上村国三郎さん。「私たちの仕事は、ただ感性に任せてモノを創るのではありません。いうならば、使う人の満足感を高めるモノ創り。この講座に参加した子どもたちにも、作品づくりと一緒にもう一つ、誰かのために役立つ、誰かと一緒に楽しむためのバイクを作ったという思い出を持ち帰ってほしいと思うんです」とも言う。

 また、子どもたちの発想から刺激を受けることも多い。「ゾウでもゴリラでも飛行機でも、バイクと組み合わせてちゃんとカタチにしてしまう想像力。それをカッコいいと思う感性。常識に因われない大胆さ。だからいつも、作品一つひとつを真剣に見入ってしまうんです」。同社は、子どもたちの無限大に広がる自由な発想が、将来、”何か”のモノづくりにつながることを信じている。