【コラム】平和憲法順守し、安保対処で適度な距離感を

2024年07月28日 07:41

画・日米FTA、米国は強い意欲。日本はTPP11優先て_交渉優位の戦略か

日本列島全体がアジア圏における「米軍・最前線基地化」傾向を強めている

 日本列島全体がアジア圏における「米軍・最前線基地化」傾向を強めている。28日には日米の外務・防衛大臣による「2+2」が都内で予定され『核戦力』明記の「共同文書」も俎上にあがる。

 安倍政権が憲法9条(戦争の放棄)解釈を変更し、集団的自衛権行使の一部を容認して以来、日米同盟深化とともに米国のアジア戦略に「自衛隊」が組み込まれつつあり、有事で気が付けば米国司令官下に配されているということがないよう、独立国として、適度な距離感を常に意識しつつ対応することが求められよう。

 岸田文雄総理は防衛力強化=外交力強化と信じている。今月19日の経団連夏季フォーラムでも「外交力の裏付けとなる防衛力強化へ自らの抑止力と対処力を強化していく」と言い「私の政権になって43兆円に及ぶ防衛力強化を決定」と強調した。

 米国の「核の傘」に入りながら、アジア戦略の歯車に組み込まれることも容認しているようにみえる。岸田総理は米国議会での演説で「日米同盟の現代化」という考えを述べ、米国議員を前に「日本は共にある」とスピーチ。ここまで深化を主張し、距離感がなくなれば、有事の際、独立国として独自の判断ができるのか、岸田政権には危うさがある。

 日本国民は戦後の歴史、特に外交でのバランス感覚を大事にした「平和外交政策」の野田政権までの歴史を確認し、安倍政権以降、これまでの外交の歩みをチェックする必要がある。冷静な分析が必要だ。

 ロシアによるウクライナへの侵略以来、岸田総理は「同じことがアジア圏でも起こりうる」と中国、北朝鮮、ロシアを念頭に「防衛力の抜本的強化が必要」とし、国内防衛産業の育成を含め、5年間で43兆円を注ぎ込むことを決め、米軍との共同訓練を軸に韓国・オーストラリア、インド、フランス、ドイツ、スペイン、パキスタンなど他国軍と自衛隊との共同訓練を加速。今月もスペイン空軍、ドイツ空軍との共同訓練を北海道で行った。

 また米海軍最新鋭ステルス戦闘機「F35C」が米軍岩国基地(山口県)の戦闘攻撃飛行隊に年内配備する計画が今月、防衛省から地元に伝えられた。「F35C」は在日米軍では初配備になる。同基地にはオスプレイも配備される。F35Cは日本に配備される空母「ジョージ・ワシントン」で運用するという。

 今月21日、読売新聞は「核兵器を含む拡大抑止を明文化、日米が初の共同文書・・・中国・ロシア念頭に年内策定を目指す」との見出しで「日米両政府が米国の核を含む戦力で日本を守る拡大抑止に関する初の共同文書を取りまとめる方針を固めた」と報じた。

 共同文書は「日米同盟の対処力強化」を文書化するもので、世界各国に、日本が米国の「核」に依存し、米国・米軍と日本・自衛隊が運命を共にするような印象付けになる可能性もある。

 有事の際、自衛隊が米軍指揮下で動く、あるいは動かなければならないような事態にならないか。独立国として独立した「実力行使防衛部隊」として、日本独自の判断で米軍と連携し、また離れることのできる距離を常に確保しておくことが平和憲法を順守する義務を負う日本政府としての責任であることを忘れてはならない。

 「有事には単一の司令官が不可欠」などという憲法無視の論理は成り立たない。政府は常に平和憲法を順守し、安保対処に適度な距離感を保ち続ける必要がある。(編集担当:森高龍二)