【コラム】「政治の正常化」につながる総選挙を期待する

2024年08月25日 10:27

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筆者は岸田政権の3年を振り返って、経済政策は日本経済団体連合会の提言や要望が8割以上、外交・安全保障は米国言いなりになってしまったと感じている

 久しぶりに「枝野節」を聴いた。「ヒューマンエコノミクス」は今年の流行語になりそう。22日の立憲民主党総裁選出馬表明で枝野幸男衆院議員が掲げた政策8つの柱の総合表現が「ヒューマンエコノミクス」(人間中心の経済)だった。「新しい時代を切り拓く」ステップになることを期待する。

 2011年3月11日、東日本大震災の発生と東京電力福島第一原発事故という過酷な状況の中、当時、官房長官に就いていた枝野氏が不眠不休で対応していた姿が懐かしくもあり、「人として、政治家としての責任感」の強さを感じた記憶がよみがえる。現行制度下では史上最年少で官房長官の重責をつとめた方である。

 枝野氏は出馬表明の後、自身選挙区の埼玉で街頭演説を行った。「出馬表明の記者会見をしてきた」と。街頭演説では目指す社会をアピールした。国民にとって選択肢となる国民政党になるとの思いを前面に出した。

 自身が掲げる「徹底的に『人』に着目して『人』を支え、すべての『人』の能力を最大限に引き出す経済をつくる」という「人間中心の経済」(ヒューマンエコノミクス)を通し「すべての国民が個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができる社会をつくる」という目指す社会像を強調した。

 掲げた政策目標に自信があるのだろう。枝野氏は立憲代表選挙立候補者がそれぞれ掲げる政策、主張に耳を傾けてほしいというだけでなく、自民党総裁選立候補者の政策にも耳を傾け、見た目、外見でなく、提示する政策を吟味し、判断してほしいと与野党第1党のトップ選びに注目するように呼びかけた。

 今回の党首選びを「準決勝」と表現し、10月公示、11月投開票の日程もとりざたされる衆院解散・総選挙が決勝戦」と位置付けた。

 「人口減少が進む日本では社会保障や公共サービスなど支えあう仕組みが重要。同時に力を失った経済を再生させるためには高い付加価値を持つ商品やサービスが求められる。どちらの場合も大切なのは、それを担う人だ」と強調した。

 そして「すべての国民が個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現することで、日本の成長の基盤がつくれる」と聴衆に訴えた。非常にわかりやすい内容だった。枝野氏が掲げる政策8つの柱は枝野氏のHPに「枝野VISION 2024」として詳細が載っている。是非、ご覧いただきたい。

 立憲代表選挙には枝野氏のほか、現職の泉健太氏も続投に意欲を見せ、23日の記者会見でも「準備中」と語った。野田佳彦元総理や馬淵澄夫元国交大臣の名前も聞かれる。どのような選挙になっても、国民にそれぞれが掲げる政策が代表選挙を通してわかりやすく伝わるように工夫を凝らしてほしい。

 筆者は岸田政権の3年を振り返って、経済政策は日本経済団体連合会の提言や要望が8割以上、外交・安全保障は米国言いなりになってしまったと感じている。5年間で43兆円を充てる防衛に関する抜本的強化費用も「額ありき」で危うい気がしてならない。

 また自民派閥の裏金問題で該当する議員のほとんどが説明責任を果たさないままになっている。架空公設秘書による秘書給与詐欺においても自民党を離党させて終わりになった。加えて、裏金議員を来年夏の参院議員選挙へ公認候補にする始末。自浄能力がどこに発揮されているのか問いたい。今度の総選挙、来夏の参院選挙は「政治の正常化」を実現するための重要な選挙と受け止めている。

 自民党総裁選挙(9月12日告示、27日投開票)には小林鷹之氏のほか、茂木敏充、小泉進次郎、河野太郎、林芳正、石破茂、加藤勝信、斎藤健、野田聖子、高市早苗、上川陽子の各氏の名があがるが、政治改革に深く切り込める総裁がいるのか、この点において期待できる顔が見えない。衆参ともに与野党勢力図が国政選挙を通して均衡にすれば、もう少し「政治が正常化」するだろう。そういう選挙になることを期待する。(編集担当:森高龍二)