2011年を機に転換した睡眠市場、その成長に集まる期待

2013年03月04日 08:08

 生活必需品の中でも耐久消費財に近く、元来、回転率の悪い寝具。そこに中国からの安価な商品が多く流入し、商品価格が下落しているため、日本の布団類市場は漸減傾向にある。しかし、矢野経済研究所の調査によると、2011年のベッドリネン・寝具市場規模は100.3%となっており、わずかではあるがプラス成長を記録している。

 プラス成長となった要因には、品質や機能性を重視したユーザーの増加が上げられる。日本は、世界でも最も睡眠時間の短い国の一つに数えられている。しかし、その短い時間で満足のいく睡眠をしている人は少なく、ワコールの調査によると71.1%もの人が睡眠に対して不満を持っているという。こうした調査結果から、布団メーカー各社は、新素材を用いたものや形状を工夫したものなど、機能性が高く付加価値のついた商品を多く市場に投入。さらに、2011年の震災の影響による節電意識の上昇から、涼感や温感寝具が大幅に需要を伸ばしたことで、市場縮小に歯止めがかかり、プラスに転じる結果となった。

 こうした傾向を受け、寝具以外の商品を扱う企業も増加。パジャマやアロマ、照明など、快眠グッズの市場も拡大傾向にある。さらに睡眠・快眠を求めるサービスも増加している。例えば、睡眠時のからだの特性研究から開発したパジャマ「睡眠科学」のワコール、「眠り」に最適な環境を提供するグランドプリンスホテル京都、目覚めやすいタイミングでアラームが鳴り気持ちよく目覚めることができる「ねむり時間計」のオムロンヘルスケアの3社が共同で、眠りを見直すきっかけを提案する宿泊プランを発売。また、全国にホテルを展開する藤田観光 と、タニタ食堂で一躍有名となったタニタが共同で「安眠ルーム」を開発、ホテルグレイスリーで提供を開始するなど、多業種がこの市場に参入し市場を拡大させている。

 2011年には睡眠健康促進機構が、春と秋との2回の「睡眠の日」を制定。そのうち、World Sleep Dayにあわせて制定された「春の睡眠の日」が3月18日に迫っており、前後1週間に設定された睡眠健康週間には様々な睡眠に関するイベントが開催される。まだ発足したばかりではあるが、これも市場拡大に一役買うものとなるであろう。一説には、睡眠不足や不眠などの睡眠障害に起因すると見られる交通事故や産業事故による経済的損失は、年間で3兆円を超えるとも言われているという。事故が発生するまでに至らなくとも、日中の眠気等による効率の低下は一種の損失と言えるであろう。こうした状況を改善するためには、十分な睡眠時間を確保することが何よりも重要ではあるが、快眠を得るための道具が充実することも大きく貢献するであろう。今後の成長が期待されるとともに、成長させるべき市場と言えるのではないだろうか。(編集担当:井畑学)