若者たちは本当に「テレビ離れ」しているの? ティーンは実は「テレビが好き」

2024年09月29日 10:18

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若者の「テレビ離れ」が進んでいると言われているが、実は一概にはそうとも言い切れないようだ

若者の「テレビ離れ」が進んでいると言われているが、実は一概にはそうとも言い切れないようだ。博報堂DYメディアパートナーズが実施している「メディア定点調査2022」によると、「テレビ」の視聴時間は年々減少傾向にあり、2022年の時点で143.6分。これに対して「携帯電話/スマートフォン」は146.9分に達しており、メディアの視聴時間が逆転し、デジタルシフトが進んでいることは間違いない。しかし、その一方でテレビ番組を「とても好き」と回答した人は全年代を通して10~20代が最も多く、33.9%にも達している。ちなみに現在のテレビの主な視聴者層とみられる50~60代は27.2%と、はるかに低い数字だ。

 「テレビ離れ」とは言うものの、単純にインターネットへの代替が起きているわけではなさそうだ。例えば、テレビを視聴しながらスマホなどでSNSを平行利用しているスタイルが増えている。企業がテレビ広告を以前ほど重視しなくなったと言われているが、依然として、テレビで紹介された店には行列ができ、ドラマで人気俳優が身に着けていたグッズがヒットしたりする。視聴者を数字だけで判断してしまうと、たしかにテレビはオワコンへの流れを辿っているように思えなくもないが、安易に結論付けてしまうのは危険だ。

 例えば、同じ番組でも、テレビで流れるCMとTVerなどのネット配信で流れるCMは異なる。ネットCMは基本的に、ユーザーが興味や関心を持っていると推測されるジャンルのものが選択されて優先的に流されるので、ターゲットにピンポイントでリーチできる強みがある。しかし、その反面、興味のないものや、これまで関心を持っていなかったジャンルのCMを目にする機会は極端に減ってしまう。これに対し、テレビCMはピンポイントでリーチできない分、ネットCMでは網羅しにくい潜在的な顧客にまで情報を届けることができる。また、法の順守や正確性、倫理が担保されていることや、有名なタレントが起用されていることなどで、視聴者の安心感につながることも強みだ。ネットCMの場合、怪しげな海外ショッピングサイトの広告なども増えており、不安や不信感につながることも多い。また、そういったCMと横並びになると、企業イメージを損なうことにもなりかねない。

 例えば、近年のテレビCMで印象的なものの一つに、総合住宅メーカーAQ GroupのCMがある。もしも同社の名前を知らなくても、「リビングにキリンがいるCM」と言えば、何となく見覚えがあるのではないだろうか。

 人気タレントの相葉雅紀さんがAQ Groupアキュラホームの「相葉店長」として登場していることもあって、昨年9月の放送以来、大きな話題を呼んだ。今現在、住宅購入を考えていない人にとっては、単にインパクトの強いテレビCMでしか見えないかもしれない。でも、そういう視聴者がいざ住宅購入を検討する際には「あのキリンのCMの住宅メーカー」「相葉雅紀さんが店長役をしていた」という印象は大きな信用と安心感につながることだろう。ちなみに2024年9月からは、相葉店長が、お客様の理想の住宅をつくるために奮闘する、心温まるドラマ仕立てのストーリー「壁ドン編」が放映されている。アキュラホーム独自のAQダイナミック構法によって壁や柱をなくすことで、夫婦間の壁もなくしてしまうという熱血相葉店長の奮闘ぶりがコミカルで面白く、しかも分かりやすい。アキュラホームの真摯な家づくりの姿勢も伝わってくる良いCMだ。

 もちろん、ネットCMにも面白いものはたくさんある。テレビCMに比べると秒数などの制限も緩いので、尺の長い見応えのある作品も多い。とくに今は広告の出稿量もネットCMがテレビCMを追い抜き、製作費も増えているようなので、凝った作品も増えている。しかし、その流れが加速すればするほど、自社のCMが他に埋もれてしまう可能性も大きくなってしまう。リーチできなければ、どんなに製作費をかけても意味がない。近い将来、テレビCMが大きく巻き返す日が来るかもしれない。(編集担当:藤原伊織)