【コラム】電気自動車(EV)を巡る合従連衡──その2、ホンダと日産が経営統合か? ホンダの独立路線転換

2024年12月21日 07:54

内田誠社長と三部敏宏社長

8月1日、日産自動車とHonda 次世代SDVプラットフォームの基礎的要素技術の共同研究契約を締結した際の内田誠 日産自動車社長(左)と三部敏宏 本田技研社長

 ホンダと日産が経営統合に向けた協議を進めているとのニュースが12月18日、報道各社がいっせいに伝えた。電気自動車(EV)の分野で中国などの新興メーカーが先行するなか、経営統合によって巨額の投資を分担し、競争力を高める狙いがあるとみられる。

 ホンダと日産は今年3月に自動車電動化などで協業に向けた検討を始め、8月には次世代車に欠かせない車載OSなどのソフトウエアの開発やEVで部品の共通化を進めることで合意していた。今回の報道によると、経営統合によって、さらに連携を深めていくものとしている。

 ホンダは、1948年に二輪メーカーとしてスタートし、1963年に軽四輪トラックを開発。四輪メーカーとして名乗りを上げた。その後、アメリカなど世界各地の市場に進出、昨年の世界販売台数では398万台と世界7位となった。

 そのホンダは経営面では独立路線を貫き、これまでほかの自動車メーカーと資本関係を結ぶことはなかった。ところが近年、EV開発や販売でアメリカ自動車大手General Motors(ゼネラル・モーターズ/GM)と提携、加えてソニーグループとEV開発で提携するなど多角的な施策を展開している。また、IBMとは車載用の半導体やソフトウエア開発を共同で行なう計画を進めている。

 こうした部分的提携関係はあるが、日産との経営統合の協議に入ることでこれまでの独立路線を転換することになりそうだ。

 果たして今回の日産+ホンダの提携、スムーズに進むのだろうか? 昨年の事例を踏まえてみたい。

 確かに世界の自動車産業は、他業種を巻き込んで“混沌”とも言えそうな状況を呈している。2023年10月に飛び込んできたニュースは、次世代型EV開発を巡る企業間の障壁を超える提携の難しさを象徴する。発表された概要はこうだ。

 ■ホンダとGMのEV開発協働、決裂!

 ホンダは2023年10月26日、米国自動車最大手のGMと進めていた価格を抑えた量販EVの共同開発を中止したと明らかにした。1年以上協議してきたが、コストと商品性、および事業性で両社の考え方が合わなかったというのが理由だ。

 ホンダとGMの2社は2022年4月、量販価格帯のグローバルEVシリーズの共同開発に合意したと公表。以下の戦略を明らかにしていた。

 (1)量販価格帯の新たなEVシリーズを2027年以降、北米を皮切りに投入を予定。

 (2)コンパクトSUVを含む、グローバルで人気の高いセグメントに向けたEVシリーズをリリースする計画。

 (3)両社で世界規模での生産を可能にする設計を検討する。

 (4)次世代二次電池に関する協業の深化を促進していく。

 しかしながら、両社で描いたEV戦略は破綻したことになる。

 GMとホンダの提携が破局を迎えた理由は何だろうか? 推察するに大きな問題となったのは、恐らく(3)の共同声明「両社で世界規模での生産を可能にする設計を検討」だと思われる。

 同じようなコトが企業文化が大きく異なるホンダと日産の提携でも起こらないだろうか。

 統合への不安材料は日産の経営状態だ。別項で報告したように2024年9月中間連結決算は、世界的な販売不振で最終利益が前年同期比9割減、9000人の人員削減といったリストラ策を打ち出している。新たな持ち株会社の出資比率や投資負担を巡る協議、日産の格式を保有するルノーの存在も問題となり、協議が難航する恐れもある。

 10月18日午前の段階で、ホンダと日産が経営統合に向けて協議に入ると報じられたことについて、両社それぞれコメントを発表、「(報道の内容は)当社が発表したものではない。各社の強みを持ち合い、将来的な協業について、さまざまな検討を行なっているが、現時点で決定した事実はない」としている。なお、情報筋によると、12月23日に具体的な発表が両社からあるという。(編集担当:吉田恒)