能登半島地震から2カ月。内閣府の非常災害対策本部が2月28日に公表した被害状況によると、今回の地震による人的被害は死者241名、重軽傷者1299名の計1540名、住宅被害は全壊7737棟を含む全77703棟に上る。石川県では480か所の避難所に11612人、新潟県では2か所の避難所で13人の方々が避難生活を送っている。自宅などで避難している人たちも安穏と過ごせているわけではない。石川県内の7事業者においては、管路破損などのため未だ約 20050 戸が断水中で、日本水道協会や自衛隊、国土交通省などによる応急給水で凌いでいる状況が続いている。電力も、発災時の約4万戸から大幅に復旧したとはいうものの、石川県の北陸電力管内で約 710 戸(輪島市約 490 戸、珠洲市約 190 戸 、能登町約 20 戸、七尾市約 10 戸)の電力需給が途絶えている。また、外観だけでは被害が分かりにくい危険な住宅も多いとみられている。道路の隆起や液状化などの影響が、家屋の基礎にひび割れや傾きを及ぼしている可能性もある。
日本政府は、石川県内の6市町(珠洲市、能登町、輪島市、穴水町、志賀町、七尾市)で半壊以上の住宅被害を受けた世帯の生活再建支援として最大600万円の交付金を支給する他、石川県内の半壊以上の世帯で、県内で新築・購入、又は補修を行う場合、収入用件を満たせば、融資に係る利子分に対して最大300万円の一括前払いの助成が受けられる、金利助成制度を発表している。また、観光需要の落ち込みが懸念される被災地域において、国内旅行者だけでなくインバウンドも対象にした旅行・宿泊料金の割引を支援する「北陸応援割」を3月から開始し、GW前までを念頭に観光需要を喚起する施策を打ち出している。時期尚早との意見もあるが、被害の大きかった地域と比較的軽微で済んだ地域とでは、支援策は分けて考えるべきだろう。風評被害などによって地域経済が衰退してしまうより、活性化する方が被災地域の復興・復旧にも大きく貢献するのは明らかだ。
そんな中、民間でも義援金の輪が広がっている。日本赤十字社に寄せられた能登半島地震災害義援金は2024年1月25日時点の集計で約145億円が集まっており、この義援金は被災地の義援金配分委員会に全額送金され、同委員会で定める配分基準に従って市区町村等の自治体に配分され、被害を受けた方々の生活を支えるために役立てられる。
日本赤十字社に届く義援金には、金額以上の様々な思いが込められているものも少なくない。例えば、沖縄県立鏡が丘特別支援学校は、校内での募金にとどまらず、生徒たち自らが企画し、募金箱やのぼりを製作して、県民広場での街頭募金を展開。そうして集めた義援金56,239円を赤十字社に寄付している。
また、阪神・淡路大震災で被害を受けた際、全国から支援を受けた兵庫県の白鶴酒造では、従業員から募った625,727円を含む計172,5727円を義援金として、石川県及び日本赤十字社石川県支部、富山県酒造組合に寄付。さらに同社では、能登出身の季節従業員には別途見舞金を用意するとともに、出来る限りの支援を続けていくとしている。
また、東日本大震災による津波被害で60億円を超える大きな損害を受けた日産自動車も、支援金と車載用エマージェンシーキットなどの救援物資をあわせて総額5000万円相当の支援を行っている。
他府県で起こった災難と他人事のように考えるのではなく、自らもしっかりと災害に備えたうえで、被害の大きかった地域の人と助け合い、一日も早く復旧・復興ができるように協力し合いたいものだ。(編集担当:藤原伊織)