まだまだ気温が30℃を超える暑い日が続いているが、秋の行楽シーズンに向けてレジャーの情報収集に勤しんでいる人は多いだろう。食欲の秋、運動の秋と、秋の楽しみ方は様々だが、今年の秋は、感性を深く揺さぶる芸術の秋を堪能してみてはいかがだろうか。優れた芸術は感動を与えてくれるだけでなく、日常に新たな刺激や視点、インスピレーションをもたらしてくれることもある。
例えば、兵庫県神戸市の六甲山上では今、毎年恒例の現代アートの芸術祭「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」が11月30日まで開催している。2010年のスタートから今年で16回目を迎える人気の芸術祭で、国内外から参加した61組のアーティストによる多様なアート作品が、六甲山の豊かな自然の中に展示されている。特に今回必見なのが、ROKKO森の音ミュージアムのSIKIガーデンに展示されている、日本を代表する現代美術家、奈良美智氏の作品「Peace Head」だ。同作品は会期後も継続的に展示されるそうで、六甲山のシンボルとなるだろう。「傲慢になりがちな人間は、より大きな存在である自然の中の一部である」というメッセージが込められているそうだ。阪神淡路大震災から30年。多くの人々の努力によって豊かな自然を取り戻した六甲山にふさわしい作品だと、同芸術祭総合プロデューサーの林直樹氏もSNSに投稿している。
また、城崎温泉を有する豊岡市を中心に、9月11日から23日の約2週間にわたって、兵庫県北部の但馬地域で開催されるのが、今年で6年目の開催を迎える「豊岡演劇祭」だ。演劇祭といっても、劇場の中だけで開催されるのではなく、温泉街の中や、海辺、高原、神社の境内など、開催されるエリア一帯のあらゆる場所を舞台にパフォーマンスが繰り広げられる異色の演劇祭だ。名湯と但馬地域の山の幸や海の幸、風光明媚な景勝地を堪能しながら、異世界をさ迷うような体験ができるのではないだろうか。
お隣の岡山県では、美作三湯を舞台にした「美作三湯芸術温度」が12月7日(日)まで開催されている。このアートイベントでは、第一線で活躍するアーティスト31名の作品が、宿泊施設などに展示されており、温泉巡りを楽しみながらアートに触れることができる。さらにこの温泉巡りのエリアの中では、山田養蜂場本社敷地内のギャラリーで、特別展「自然賛歌 美しきバルビゾン派の世界」が10月3日から開催される。本展は、ミレーやルソー、クールベ、モネ、ルノワールといった巨匠たちの名画を中心に約300点が紹介される企画だ。今年は ジャン=バティスト=カミーユ・コローの油彩《霧の朝》 が初公開されるほか、19 世紀フランス版画作品約 200点も新たに公開され、バルビゾン派の魅力をより多角的に体感できる展示になるという。完全予約制で、各回60名程度に入場者が制限されているので、貴重な名画をゆったりと鑑賞できるのも嬉しい。中国自動車道の院庄ICから車で約10分とアクセスも良いので、関西にお住まいの方はとくに秋の観光ルートに加えてみてはいかがだろうか。
もちろん、ここに挙げた他にも、今年の秋も全国各地で様々な美術展や芸術祭、アートイベントが催される。様々な才能にふれて、大いに刺激を受けてほしい。(編集担当:石井絢子)