AIが生む見えない仕事が現場を蝕む。生産性向上の裏で特定社員に集中する新たな労働負荷の正体

2026年02月20日 07:34

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AI導入で楽になる人と逆に忙しくなる人の残酷な二極化。業務効率化の旗印の下で放置される負担分散の落とし穴

今回のニュースのポイント

・負担の偏在:AIを使いこなせる人材にAIの面倒を見るという新しい付加業務が集中している実態

・見えないコスト:効率化された時間の裏で、データの整備やプロンプトの調整といった準備に時間が消える

・組織の硬直性:古い評価制度のままAIを導入することで、効率を上げた人が逆に損をする構造的欠陥

 AIを導入すれば、仕事は魔法のように消えてなくなる――そんな期待を抱いて始まったプロジェクトの多くが、2026年の今、現場の疲弊という壁にぶつかっています。たしかに定型業務のスピードは劇的に上がりましたが、その裏側ではAIが吐き出した成果物を、人間が使える形に修正するという、かつては存在しなかった種類の労働が大量に発生しています。

 この状況を家事の自動化に例えてみましょう。最新の自動調理家電(AI)を導入したものの、食材の下ごしらえ(データ整理)や、調理後の複雑な洗浄(システム保守)、そしてレシピ通りにできなかった時の微調整(例外対応)をすべて一人が担っているような状態です。家族全員が楽になったように見えて、実は調理家電を担当する一人の負担が激増している。今の企業組織でも、これと同じことが起きています。

 特に深刻なのは、AIを使いこなせる優秀な層にAIの監督という責任が集中し、彼らの本来のクリエイティブな時間が奪われている点です。組織全体としては数字上の効率は上がっているように見えますが、その果実を享受している層と、それを支えるために裏方で奔走する層の分離が進んでいます。

 一方で、会社側にも譲れない切実な理由があります。労働力不足が深刻化する2026年、AIの導入は単なる効率化ではなく、事業を継続するための「延命策」でもあります。経営層は、膨大な投資コストを回収し、未来の成長基盤を整える重圧を背負っています。現場への負担は決して本意ではなく、全社的な生き残りのための試行錯誤の過程であることも事実です。

 もしあなたが今、AI導入によって逆に忙しくなっていると感じているなら、それはあなたの能力不足ではなく、組織の負担分散の設計ミスかもしれません。しかし、それを批判で終わらせるのではなく、経営側の「生き残りたい」という切実な想いと、現場の「持続可能に働きたい」という願いを、どう結びつけるかを話し合う時期に来ています。新しい負担の存在を客観的なデータとして共有し、チーム全体でAIとの付き合い方を見直すこと。現場と経営が互いの苦労を認め合い、共通のゴールへ向けて負担を再設計することこそが、テクノロジーを本当の意味で全員の味方にするための、2026年流の働き方の知恵となるはずです。(編集担当:エコノミックニュース編集部)