2011年も半分以上が終了したが、今年は震災からの復興の糧になればという思いが強いこともあり、国内スポーツ選手の活躍が目立つように感じられる。不況の影響で経営状態の不安定さを伴い、ひと昔前のように、企業が積極的にプロスポーツ競技のチームを持ち、また個人選手のスポンサーになる頻度は一時より減ってはいるが、継続して支援している企業もまだまだ多い。また、スポーツ振興団体を設立し、選手育成も含めスポーツを側面からサポートしている企業もあるようだ。
「公益財団法人ミズノスポーツ振興財団」は、1970年に設立された財団法人ミズノスポーツ振興会と1977年に設立された財団法人ミズノ国際スポーツ交流財団の合併により誕生。同財団はスポーツ振興とスポーツの国際交流の発展という設立主旨・目的を持って活動している。現在、同財団の持株は約2,130万株で、この株式から生ずる収入がスポーツの振興などに役立てているという。今年度で22回目を数える「ミズノスポーツライター賞」は、「スポーツの世界を文字で描き伝える」というスポーツライターの業績を顕彰するわが国唯一の賞として定着。スポーツ報道とスポーツ・ノンフィクションに関する優秀な作品を広く公募している。
また、「公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団」は、スポーツの振興およびスポーツ文化向上による国家社会への貢献を事業目的に、スポーツチャレンジ助成事業、スポーツ振興支援事業、スポーツ文化・啓発事業を展開。近年の青少年の長期的な体力低下やスポーツに対する興味の減少など、憂慮すべき状況を打開し、さらなるスポーツの拡大と定着を図るための活動を行っている。
その活動の中でユニークな取り組みがある。平成元年よりヤマハ発動機が行っていた小学生以下の児童・幼児を対象にした第23回「全国児童 水辺の風景画コンテスト」だ。これは同財団設立後、スポーツ文化・啓発事業の一環として受け継がれた企画で、文部科学省、国土交通省、環境省、農林水産省等が後援している。同コンテストは未来を担う子どもたちが心身ともにのびのびと逞しく成長することを目的としている。「最近は室内でゲームやパソコンで時間を費やすインドアな子どもたちも一方で増えています。外へ出て身体を動かすことで、心身ともに健康になってもらうために、子どもたちの水辺で遊ぶ機会が少しでも増えればと考えています。また、身体を動かすということが、スポーツにも通じるとの思いから、このコンテストを実施しています。ここ数年は、私立幼稚園を管轄する協会などへも積極的に案内を行ったことに加え、海や川に出かけ自然について学んだり体験したりする機会が増えたことにより、年々、募集作品は増えています」と担当者はいう。昨年は8,307作品が寄せられ、「文部科学大臣賞」「国土交通大臣賞」「環境大臣賞」「農林水産大臣賞」(各1点)を含む33作品を入賞作品として選出している。
その他にも大崎電気工業の社長の遺志を受け継いで設立された「大崎企業スポーツ事業研究助成財団」、健康の増進と体力の向上に関する学術の研究及びスポーツ科学に関する調査・研究を奨励援助し、併せてスポーツの振興発展を目的とする団体を助成している「石本記念デサントスポーツ科学振興財団」、また「ヨネックススポーツ振興財団」、「サニックススポーツ振興財団」などが挙げられる。
長引く不況に追い打ちをかけた震災を考えると、国内企業の経営安定、引いては日本の再生はまだまだ、困難を極めると考えられる。しかし、世界に日本をアピールし、国内の人々に勇気を与えるスポーツの存在価値を考えると、ひたむきに頑張る前向きなスポーツ選手を支援する企業姿勢として、スポーツ振興財団を企業が設立する意義は大きいのかもしれない。