企業はコスト増に耐えられるか 相次ぐ構造変化

2026年04月20日 17:44

今回のニュースのポイント

複数分野で同時進行するコスト上昇:エネルギー価格、原材料費、人件費、物流費など、企業活動の根幹に関わるコストが複数の分野で同時に上昇しています。

企業の5割超がコスト増を最も影響の大きい要因と回答:2025年度の実態調査では、経営に最も影響を与える要因として「原材料費・人件費などのコスト増」を挙げる企業が5割超と最多を占めています。

医療・サービス業で経営圧迫が顕在化:診療報酬が決まっており価格転嫁が困難な医療機関の倒産が2025年度は71件と過去20年で最多を記録。マッサージ業などのサービス業でも記録的な倒産増が確認されています。

構造変化への適応が存続の条件に:地政学リスクによる供給不安やデジタル化による電力需要増など、一過性ではない構造変化に対し、価格転嫁や事業モデルの再構築ができるかが企業の競争力を左右する局面に入っています。

 企業はコスト増にどこまで耐えられるのでしょうか。背景には、単一の要因ではなく、複数の深刻な構造変化が同時に進んでいる現状があります。

 足元では、さまざまな分野でコスト上昇が確認されています。原油価格の上昇リスク(ホルムズ海峡の情勢不安)や、AI・データセンター増設に伴う電力需要の増加、さらには深刻な人手不足による人件費の上昇が、企業の収益を圧迫しています。帝国データバンクの原油高騰に関する調査では、「原油由来の原材料価格の上昇」が約67%、「物流費の上昇」が約62%の企業で収益悪化の要因として挙がっています。

 こうした環境変化の背景には、三つの構造要因があります。第一に、中東紛争などの地政学リスクによるエネルギー供給不安です。日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、航路の不安がそのままコスト増へ直結します。第二に、人口減少に伴う構造的な人手不足です。第三に、生成AIやデータセンターの急増に伴い、電力需要は国内外で急速に増加しており、デジタル化による電力負荷がコストの上昇要因にもなっています。これらが重なり、企業のコスト環境は一過性の景気変動ではない「前提の変化」に直面しています。

 この問題の本質は、「コスト上昇と価格転嫁の難しさ」にあります。中小企業庁の調査では、エネルギー費や労務費が上昇するなかで十分に価格転嫁を進められた中小企業は約4割にとどまっています。特に医療機関においては、診療報酬という公定価格制度のため自ら価格を上げることができず、光熱費や人件費の高騰を吸収しきれないケースが増えています。実際に2025年度の医療機関の倒産は71件と過去20年で最多を更新し、サービス業であるマッサージ業の倒産も30年で最多の108件に達するなど、価格転嫁が困難な分野から影響が顕在化しています。

 この構造は企業活動全体に影響を及ぼしています。利益率の低下は設備投資の抑制を招き、最悪の場合は事業撤退や倒産に至ります。消費者にとっては、相次ぐ値上げやサービス内容の縮小という形で家計への影響が及びます。

 今後の焦点は、企業の構造的な対応力です。単なる節約にとどまらず、エネルギー自給(ZEB導入等)による価格変動リスクの回避や、調達先の複線化といった供給網の強靭化、さらに価値に見合った価格転嫁を実現する事業モデルの見直しが求められています。企業経営の前提そのものが、効率一辺倒から「耐性」と「持続可能性」を重視するフェーズへと移りつつあると言えます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)