今回のニュースのポイント
2026年4月28日、金融庁は国土交通省、警察庁、財務省とともに、暗号資産を用いた不動産取引に関するリスクを指摘する要請文を、不動産・暗号資産関連の業界団体に連名で提出しました。不動産が犯罪収益の「出口」として悪用される危険性を重く見て、本人確認や疑わしい取引の届出の徹底を強く求めています。また、暗号資産を法定通貨に換金する行為が「暗号資産交換業」に該当することを改めて明確化し、無登録業者の排除を指示。外為法に基づく報告義務についても周知を徹底し、海外からの資金流入も含めた監視体制を一段と強化する方針を打ち出しました。
本文
これまで日本の不動産取引は、銀行振込などの法定通貨ベースで行われることが大前提でした。そこには厳格な本人確認や資金の出所確認のプロセスが確立されています。
しかし、暗号資産が決済手段として入り込むことで、その「防波堤」に新たな経路が加わり、従来の監視網ではカバーしきれない部分が生じつつあります。政府が強い警戒を示す背景には、主に3つの要素が重なり、既存の規制枠組みの隙間を突かれかねない状況への懸念があります。
まず、暗号資産は国境をまたいで瞬時に移転でき、銀行を介さない資金移動が可能なため、取引の仕組み次第では資金の出所を追跡しにくくなるというリスクがあります。次に、不動産は財産的価値が極めて高く、一度購入すれば将来的に売却することで犯罪収益を「真っ当な現金」に変換する出口として悪用される危険がある点です。そして、円安や利回り面の魅力から、日本の不動産を狙う海外マネーの存在感が増しており、暗号資産を経由した取引への警戒が一段と高まっている点です。これらが重なった結果、日本市場がマネーローンダリングの標的となり得るとの懸念が指摘されています。
こうした事態を受け、今回の要請文で政府は取引の入口から出口までを可視化する具体的な監視網を提示しました。第一に「無登録業者」の排除です。暗号資産を法定通貨に換金したり媒介したりする行為は「暗号資産交換業」の登録が必要であり、宅建業者が自ら売主となる場合でも、無登録業者を利用した決済は資金決済法違反の恐れがあると厳告しています。第二に不動産業者の「門番」機能の強化です。犯罪収益移転防止法に基づく本人確認を徹底し、顧客の属性に見合わない高額取引などの「疑わしい点」があれば、行政庁への届出や警察への通報を適切に行うよう求めています。第三に外為法による海外資金の捕捉です。3,000万円相当額を超える暗号資産の受領報告を周知するとともに、2026年4月1日からは非居住者による不動産取得の報告対象を取得目的問わず全件に拡大するなど、包囲網を一段と強めています。
リスク自体は以前から指摘されてきましたが、政府が今このタイミングで強い姿勢を示したのは、当局としても従来のリスクが実務ベースで無視できない水準に達しつつあるとの問題意識を強めているためとみられます。
暗号資産は投資資産として広く浸透し、一方で日本の不動産は投資対象として確固たる地位を確立しました。この潮流が重なり、国内市場がマネーローンダリングに悪用される現実的なリスクへの対応が急務となっています。この動きは、今後の実務に変化をもたらす可能性があります。一般の不動産購入者であっても、資金経路の透明性を証明するための確認手続きが増える可能性があり、暗号資産を用いた決済のハードルは事実上、大幅に上昇することになります。海外投資家にとっても、資金経路の透明性が確保されない投資は今後、困難を極めるでしょう。
結論として、暗号資産で不動産を買うこと自体は違法ではありません。しかし、政府の今回の措置は、不動産という国の基盤資産が犯罪に汚染されることを防ぐための「メンテナンス」といえます。「利便性」から「透明性」へ。不動産と暗号資産の融合は、利便性だけでなく安全性や透明性を最優先とする方向へ、ルール面から大きく舵を切られようとしています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













