シャープ、東芝、スマホ・タブレット関連の新技術で勝負

2012年12月12日 09:33

 2012年も、「iPhone5」や「iPad mini」をはじめ、「7インチ戦争」など、スマートフォンやタブレット端末に関するキーワードが、メディアを賑わした一年となった。その勢いは鈍化するどころか加速しており、不振が続く日本メーカーも浮上のきっかけを求め、スマートフォンやタブレット端末に関わるビジネスに重心を移動させているようだ。

 シャープは10日、高感度機能を搭載し、ペン入力やマルチタッチ操作が可能なタッチパネルシステムを開発したと発表した。今後、ディスプレイメーカーなどに発売していくという。同システムは、多数のセンサーを同時に検知処理できるシャープ独自の並列駆動方式の採用により、現在一般的に採用されている方式に比べて、信号とノイズの比(S/N比)約8倍の高感度を実現。これにより、ペン先約2mmの入力や多点を同時に認識できるマルチタッチ操作、手袋を着用したタッチ操作などが可能になるという。スマートフォンやタブレットの需要拡大に伴うタッチパネル用のユーザーインターフェイスのさらなる普及を睨み、独自のシステムを開発し、得意のディスプレイフィールドで勝負に打って出る。

 一方、東芝は、スマートフォンやタブレット端末などに搭載するモバイルプロセッサ用キャッシュメモリ向けに、低消費電力を実現した新方式の不揮発性磁性体メモリー(STT―MRAM)を開発したと発表した。この新型STT―MRAMは、世界で初めて、キャッシュメモリに適用されているSRAMよりも低消費電力での動作を実現。実際にキャッシュメモリを搭載したプロセッサ上でソフトを動作させた時の消費電力は、標準的なモバイルプロセッサ(SRAM)と比べて約3分の1に低減できるという。さらに、消費電力を下げつつ、同時に動作速度を上げることで、動作時の電力消費量を従来の10分の1程度に低減することにも成功したとしている。同製品の実用化には、スマートフォンやタブレット端末が人々の生活やビジネスにおいて欠かせない存在となりつつある今、常に課題とされていたバッテリーの持ち時間において、大きな進展に繋がることが期待される。

 矢野経済研究所が発表した「世界のスマートフォン・タブレット市場に関する調査」の結果によると、出荷台数は2014年にスマートフォンがフィーチャーフォン(カメラなど通話以外の機能を持つ携帯電話)を上回り、続く2015年にはタブレットがノートPC上回ると予測している。「iPhone5」や「iPad mini」のヒットで米アップル社が独走する中、9月末には米グーグルが自社ブランドの小型タブレット端末「ネクサス7」を発売、さらに12月中には米大手通販サイトのアマゾンが「キンドルファイアHD」などの新型タブレット端末を発売するなど、益々盛り上がりを見せる国内のスマートフォン・タブレット市場。さらなる端末のハイスペック化競争が激化していくことが予測される中、ここ最近、国際経済において影が薄くなっていた日本メーカーが先進の技術力で存在感を取り戻すことができるか注目されるところだ。