【日経平均】キプロス・ショックで今年最大の340円安

2013年03月18日 20:53

 前週末15日のNYダウは25円安になり10連騰でストップ。史上最高値の未体験ゾーンを進む〃宇宙探検〃は9日目で引き返した。そして、世界経済の地雷原、ヨーロッパでまたもやネガティブサプライズ勃発。今度はユーロ圏財務相会合で、100億ユーロでキプロスの財政を支援する代わりに、全銀行の預金封鎖を行ってATMからの引き出しも停止し、その間に預金者全員の口座から最大9.9%の課徴金を引き落とすという前代未聞のショック療法が盛り込まれ、実施に移された。もし日本でやったら経済の大混乱は必至。18日朝方の為替レートは、ユーロ円は一時121円台まで進んで122円台前半、ドル円は一時93円台まで進んで94円台後半と、全面的な円高になっていた。

 こんな出来事は、メッキがはげてどこまで下落するかで株式市場の本当の強さがわかる試金石になる。「一斉リスク・オフ」で日経平均は195.51円安の12365.44円で始まり、前場はおおむね12300円台を保っていたが、後場の午後2時過ぎから12300円を割り込んで下げのピッチを早め、下落幅は300円を超えた。結局、日経平均は今年最大の340.32円安の12220.63円、TOPIXは-23.31の1028.34でともに安値引け。売買高は31億株で売買代金は2兆円を超えていた。問題の2時台には「ギリシャやスペインの銀行に朝から行列ができているらしい」といった噂が飛び交い、為替市場ではユーロ円が122円を割ってどんどん安くなった。アジア市場も大幅安とは言え、噂に尾ひれがついて3割、4割、5割増しになり振り回されるようでは、日本の為替・株式市場もまだまだ修業が足りない。それでも「郵便ポストが赤いのも、みんなキプロスが悪いのよ」とよその国に責任転嫁して済ませ、一夜明ければ強烈な押し目買いで株価も戻せるのだろうか。

 ちなみにキプロスの2012年の名目GDPは224億ドルで、この日の東証1部時価総額の下落幅7兆6866億円(=818億ドル)の約4分の1しかない。地中海の小さな島国が、同じ島国でもGDP267倍の経済大国の株式市場を引っかき回し、自国のGDPの4倍相当の時価総額を消滅させたのだから、ある意味〃快挙〃とも言える。WBC日本代表も準決勝で島国プエルトリコに負け、日本が地中海とカリブ海の2つの島国に痛い目にあわされた1日だった。

 約7割の銘柄が下落する全面安なので業種別騰落率は全業種がマイナス。下落幅が小さかったのはパルプ・紙、空運、小売、繊維、卸売などで、大きかったのは海運、保険、鉄鋼、輸送用機器、不動産などだった。

 「日経平均寄与度御三家」はファーストリテイリング<9983>が1110円の4ケタ安、ソフトバンク<998>が160円安、ファナック<6954>が300円安で、2時台の急落を先導して3銘柄で日経平均を75円押し下げた。その他にホンダ<7267>の130円安、トヨタ<7203>の170円安、京セラ<6971>の290円安、東京エレクトロン<8035>の240円安、信越化学<4063>の180円安など、前週まで引っ張ってきた値がさハイテク株が揃って3ケタ安では、日経平均下落の歯止めはきかない。大型株がソロゾロと値下がり率ランキング上位に入ったのもこの日の特徴で、今月、含み資産の百貨店銘柄として急騰した松屋<8237>が155円安で2位。大日本スクリーン<7735>が36円安で4位、スクエニHD<9684>が83円安で5位、そして15日のヒーロー、ソニー<6758>は売買代金1位、売買高7位ながら113円の大幅安で値下がり率7位だった。

 3月相場を牽引してきた不動産は大手が三井不動産<8801>が72円安、三菱地所<8802>が115円安と悪く、ケネディックス<4321>や含み資産関連の東京ドーム<9681>や京成<9009>の上昇が目立った程度。メガバンク3行や証券大手がマイナスに沈む中で健闘したのが地銀で、横浜銀行<8332>が3円高、ふくおかFG<8354>が1円高だった。主力株では、外資系証券が投資判断を引き上げたDOWAHD<5714>が13円高で昨年来高値を更新し、テレビ事業縮小が好感されたパナソニック<6752>が4円高や王子HD<3861>の5円高が少し目立った程度だった。その中で15日上場の鴻池運輸<9025>が、地合いが悪い中で145円高で値上がり率8位に入り、ルーキーががんばる。政府の石炭火力発電推進の方針が報じられて、値上がり率ランキング上位には1位にストップ高で30円高の住石HD<1514>、4位に34円高の中外炉工業<1964>、9位に売買高でも3位に入った19円高の三井松島産業<1518>と「石炭」関連銘柄が並んだ。

 この日の主役はダイエー<8263>。ストップ高の80円高で昨年来高値を更新し値上がり率2位に入った。保有比率29%の丸紅<8002>にイオン<8267>が買い取りを打診したと報じられ、話がまとまれば筆頭株主になる見通し。ダイエー傘下から一足早くイオンが筆頭株主になっている食品スーパーのマルエツ<8178>も37円高で昨年来高値を更新し、値上がり率10位に入った。4月にJフロントリテイリング<3086>から買収するピーコックストアの売上高1126億円にダイエーの売上高8694億円が加わると、イオンの連結売上高は6兆円を超え、4兆7863億円のセブン&アイHD<3382>を引き離せる。この日はイオンは5円高、セブン&アイHDは37円安だったが、セブン&アイもこのまま黙ってはいないだろう。(編集担当:寺尾淳)