ホームベーカリーの流行で、街のパン屋が苦戦!?

2013年03月20日 14:57

矢野経済研究所によると、2012年度の国内パン市場は、前年度比100.0%の1兆3,810億円と見込まれる。少子化などから、パン市場は「長期的には縮小傾向にある」と予測している。

小売チャネル別には量販店が4,263億円で約3割を占め、次いでコンビニが3,636億円の約25%。量販店とコンビニを合わせて6割に近づいている。注目すべきは、かつて最大チャネルであったベーカリー(パン屋)の市場が伸び悩んでいることだ。2009年には出荷金額ベースで3,948億円だったのが、2011年までに約200億円も減少している。

 矢野経済研究所は、「冷凍パン生地の使用が伸び悩んでいる」ためにベーカリー市場が縮小したと分析しているが、パン屋が苦戦する背景には「ホームベーカリー」の流行も関係しているのではないか。

 ここ数年、食の安全・手作り志向が高まり、主婦層を中心にホームベーカリーが一大ブームとなっている。8割のシェアを握るパナソニックによると、ホームベーカリー市場は2005年から7年連続で2桁成長。2万円前後で購入でき、材料を入れてスイッチを押せば数時間でパンが焼き上がる手軽さが人気の秘密だ。

 主婦向け雑誌やレシピサイトなどでは、ホームベーカリーを利用したレシピの情報が盛んに交換されており、その人気ぶりをうかがわせる。レシピをまとめた別冊がヒットしている主婦向け雑誌『Mart』の編集長によると、読者は「どんなパンが焼きたいか」という問いに、パンの名前ではなく「◯◯で売ってるようなパン」とお店の固有名詞を使った言い方をしたという。パン屋の味を自宅で再現できる楽しみが受けている。

 これまで街のパン屋やベーカリーチェーンなどは、大量生産のパンとは一線を画する「手作り感」で差異化を図ってきた。だがそのようなパンを好む層が、ホームベーカリーでの手作りに流れている可能性はある。ただでさえ小麦など原材料の値上がりに悩むパン屋にとって、この家電の流行はさらなる脅威かもしれない。