2月の新車販売台数の速報が発表され、データを見る限りではまだ底を打ったとは言えない状況の自動車業界。軽自動車市場も同じ事が言えるが、ガソリンエンジンでの燃費向上、EVとの関わりなど、取り巻く状況は劇的に変化してきている。
3月4日に発表された2月の車名別新車販売台数(日本自動車販売協会連合会などデータに基づく)は先月首位を陥落したトヨタの「プリウス」がわずか 1ヶ月でトップの座を奪回した。先月首位だったホンダの「フィット」は好調ではあったが、「プリウス」の伸びには届かなかった。だが、「プリウス」の前年同月比は70.8%と大きく前年を割っており、また普通車全体でも6カ月連続でマイナス傾向となった。
一方、軽自動車は先月、約2年ぶりに首位の座を奪い返したダイハツ「ムーヴ」が好調をキープし、2ヶ月連続での1位(全軽自協)になった。ムーヴは普通車も入れた全体でも4位の数字だ。だが、2010年は軽自動車首位のクルマは全体でも必ずベスト3(2位か3位)には入っていたのが、14カ月ぶりに圏外になってしまった。また、軽自動車市場も全体ではマイナス成長(5カ月連続)となっており、自動車市場全体で見てもエコカー補助金打ち切りの反動は大きく、まだまだ底を打ったとは言えないのが現状だ。
では、HVとコンパクトカーとの熾烈な競争の中、軽自動車業界を取り巻く状況はどのように変化しているのだろうか?
軽自動車はダイハツ「ムーヴ」のCMで謳われる”TNP27”のコピーなどもあり、ガソリン車の低燃費という位置付けを強固なものに近付けた感もある。ただ、HVは元々低燃費、コンパクトカーも燃費は良いという消費者のイメージもあり、絶対的な優位という立場ではない。
そんな中、ダイハツは2009年のモーターショーでコンセプトモデルとしてお披露目された「e:S(イース)」をベースとした新型車を今夏投入する事を発表している。このクルマはJC08モードで30㎞/?の超低燃費を実現しているが、設定価格も100万円を切る事を目標にしており、今年ダイハツにおける最大の目玉商品になると言っても過言ではない。政情不安の影響で原油価格が高騰し、ガソリンの値段が上昇している中、消費者の目は燃費に対して敏感なのだから、正にタイムリーになる可能性を秘めている。
また、同社の社長は一部のインタビューで、EVへの参入も表明している。ただ、その位置付けはあくまでも”シティコミューター”としており、ガソリン軽自動車との差別化も今後注目される所だ。ダイハツと軽自動車市場の主導権を争うスズキもだまってこのような状況を見ているはずもなく、何らかのアクションを期待せずにはいられない。
世間の風潮はあくまでもEVやHVをエコカーとしている。だからこそ、軽自動車の大手メーカーはガソリンエンジンでの低燃費性能を不動のものとし、そして早急に別のカテゴリーとしてEVなどの市場投入計画を具体的に示す必要がある。そのアクションが自動車業界全体を活性化し、さらにはエコカーの一番手としての認識を高めることに繋がっていくはずだ。今年はその分岐点になるに違いない。