シャープ、鴻海精密工業の出資見送りで窮地に

2013年03月27日 06:48

 資金集めに東奔西走しているシャープ<6753>が、鴻海精密工業との間で合意していた第三者割当増資の実施について、払込期間の最終日である平成25年3月26日までに払込みが行われなかったと発表した。関係当局の許認可が得られなかったこと等が理由だという。

 昨年3月に発表していた内容は、1億2164万9000株を1株につき550円で発行し、約669億円を鴻海精密工業から調達するというものであった。シャープはこの資金を基に、モバイル機器関連の液晶製造設備の増強・合理化、及び液晶ディスプレイの新規技術導入に係わる投資等を実施する予定としていたが、その見直しを迫られることとなった。

 今回の払い込みが行われなかったことは、共同運営をしている堺ディスプレイプロダクト(SDP)など、他の資本業務提携に影響を及ぼすものではないとしているが、果たしてどうであろうか。

 払い込みが行われなかった理由として、「関係当局の許認可が得られなかったこと等」が挙げられているが、具体的には、急激な株価の下落により一株あたりの価格が550円では割に合わないこと、技術流出を防ぎたいシャープが非協力的ではないことなどが理由として様々な場で報じられている。実際、交渉が順風満帆とはいかなかった理由はこれらであろうが、やはり、サムスン電子との資本提携が決定打になったことは否めない。鴻海精密工業は「アップルからの受託生産が収益の6割から7割を占めていると推計される」と報じられるほどアップルの生産工場化しており、「打倒サムスン」を掲げているとも言われる。そしてアップルとサムスンは言わずと知れた仲であり、単なる競合他社、ライバルといった関係ではなく、世界各地で特許訴訟を繰り広げる「敵」である。そんな相手と水面下で協議が進められていたのであるから、穏便に事が進む訳がない。その結果が今回の出資見送りであろう。

 他の資金調達も視野に入れつつ今後も交渉を続けるとされているが、関係の修復は容易ではないであろう。このまま調達先が見つからなければ、懸念していた技術流出が最悪の形で実現してしまうのではないだろうか。いかにして経営を再建するかではなく、「いかに影響の少ない形で会社を終わらせるか」へと意識が移る日も遠くないのかもしれない。(編集担当:井畑学)