今年10月に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を目前に控え、住宅各社の木材調達の取り組みが本格化してきた。2007年に住宅最大手の積水ハウス <1928> が独自の木材調達ガイドラインを策定したのを皮切りに、同年に住友林業 <1911>、そして今年6月にはミサワホーム <1722>も同様の木材調達に関する指針を策定している。
現在、違法伐採や過剰な大規模開発など、様々な要因によって世界で年間1,300万haもの森林が消失しており、これによる自然生態系への影響は計り知れない。住宅建築の際に大量の木材を使用する住宅や建材メーカーなどには、使用する木材がどの地域でどのように伐採されたのか、森林や生態系を大きく破壊する無理な伐採を行っていないかなど、社会的に公正で環境に配慮した木材の調達を推進していくことが求められている。
一口に木材調達の指針といってもその内容はメーカーによって少しずつ異なっているが、例えば、先駆者である積水ハウスでは、「違法伐採の可能性が低い地域から産出された木材」や「自然生態系の保全や創出につながるような方法により植林された木材」、「国産木材」など、全部で10の指針が定められている。そして、調達する木材を各指針に照らし合わせて点数をつけ、その合計点によって調達レベルの高いものからS・A・B・Cの4つの調達ランクに分類し、評価する。これらの活動を木材の供給業者やNGOと連携して行っていくことで、Cランクの木材を減らすとともにSランクの木材を増やし、”フェアウッド”の調達を進めている。
木材調達に関して生物多様性に配慮する流れが本格化する中、プレハブ建築協会(和田勇会長=積水ハウス会長兼最高経営責任者)でも、2011年度を初年度とする10年間の環境行動計画に、生物多様性に対する取り組みを盛り込むことが決定された。具体的な内容は、木材調達の方針について5年後までに原木の供給源の特定と伐採権の確認を行い、10年後までに森林認証材の使用を徐々に普及させていく、というものだ。
住宅業界が率先して木材調達に関する自主的な規制を行っていくことが、木材の品質や調達を安定させるだけでなく、年々進む森林や生態系の破壊に歯止めをかけるための足がかりになれば、その社会的意義はより大きなものになるだろう。
(編集担当:上地智)