近時、その重要性が広く啓蒙されている「ダイバーシティ経営」。性別、年齢、国籍、障がいの有無などだけでなく、職歴や経歴なども含んだ多様な人材を活かした経営を示すものであるが、その重要な指標の一つとして、企業における女性の比率や地位が挙げられるであろう。
こうした中、太陽ASGグループが、非上場企業を中心とする「中堅企業経営者意識調査」を実施し、「女性経営幹部」に関する世界44カ国の調査結果を発表した。
これによると、世界44カ国の中堅企業における「従業員の女性比率」は34.8%、同「経営幹部の女性比率」は24.2%となっている。「経営幹部の女性比率」は2012年調査の20.9%より3.3ポイント増加しており、2004年以降6回実施した同調査で最も高い結果となっている。国別にみると、比率の高い順に、中国が50.6%、ポーランド47.7%、ラトビア47.7%、エストニア40.2%等と続く。一方、アラブ首長国連邦の10.8%やオランダの11.2%、スイス13.6%、イギリス19.0%、米国20.3%等が44カ国平均より低くなっており、中でも日本は、7.4%で44カ国中最下位となった。
注目すべきは、同調査において実施された「上場企業において取締役会や常務会等における女性の比率を割り当てるクオータ制が導入されるとしたら、どう思われますか。」という問いに対する回答であろう。44カ国平均は「反対」が55.2%、「賛成」が37.2%、「わからない」が7.6%となり、「反対」が「賛成」を18ポイント上回っている。ボツワナやトルコ、中国、台湾等では「賛成」が多いものの、日本では「反対」が27.7%、「賛成」が16.8%、「わからない」が55.4%となっている。「わからない」の回答がずば抜けて高いところから、日本人特有の曖昧さが感じられる。もう一歩踏み込んで推察すれば、女性従業員・幹部比率を上げることは「社会的に求められている」ことであるとの認識がある一方で、実際には採用することに対して反対であるとの意識があるため、「わからない」という無難な回答に「逃げた」との憶測も出来るであろう。この問いに対して「反対」と回答する企業の中には、女性を登用することに反対なのではなく、男女差を設けること自体に反対する意識を持つ企業もあるであろう。その為、「反対」であることに否定的な見解を持つことの方が的外れと言える。
本調査結果から、「日本は女性の社会進出や地位向上が進んでいない」「女性の幹部比率を上げるための政策を実施すべきだ」との意見も多く出るであろう。しかし、企業経営においては、多彩な人材を適材適所で活用することの方が重要である。あくまでも、その「結果として」女性比率が上昇するべきものであり、女性比率を「上げるため」の施策を取ることは本末転倒に他ならない。本調査結果の様な数字に踊らされず、手段と目的とを取り違えずにダイバーシティ経営が浸透することを期待したい。(編集担当:井畑学)