三菱重工、がん病巣を的確に捉える放射線治療装置を販売

2010年07月02日 11:00

 三菱重工業 <7011> は、狙った病巣のみをピンポイントで連続照射する動体追尾照射機能を新たにオプション搭載した放射線治療装置「MHI-TM2000」の販売を開始する。

 現在のがん放射線治療は、体内のがん病巣へ正確に放射線を当て、周辺の正常細胞への影響をいかに最小化するかを追求してきた。病巣に正確に照射するためには、位置合わせに多大な時間と労力が必要で、より効率よく照射できる機能の開発が求められていた。同社は2004年、がん病巣への照準合わせが簡便な放射線治療装置のプロトタイプ機を開発したのを機に医療機器分野へ本格参入。2008年1月に「MHI-TM2000」の製造販売承認を取得し、機械事業部(広島市西区)を拠点に国内外で販売活動を行う一方、放射線治療関係者から注目を集めていた動体追尾照射機能の開発を推進してきた。

 今回の追尾照射機能は、同社の保有する技術を融合して実現した機構で、リング型構造体の内部に搭載したX線体内撮像装置から得られた情報によりがん病巣の位置をリアルタイムに把握。その上で、放射線照射ヘッドを自在に動かし、治療ビーム(放射線)の方向を自由に変えることで、呼吸などで揺れ動くがん病巣を追いかけ、病巣だけに集中的に照射することを可能にした。なお、この追尾照射機能は既存の「MHI-TM2000」にも容易に搭載できる。

 世界に先駆けて実現した特殊なこの機構は、薬事法に基づく厚生労働省の製造販売承認もすでに取得。同社は今回の追尾照射機能の実用化を弾みとして、医療機器の開発・製造・販売事業をさらに強力に推進していく構えだ。
(編集担当:宮園奈美)