ネット選挙解禁に向けて動き始めたIT関連企業

2013年04月21日 18:27

 4月19日、改正公職選挙法が参議院本会議で、全会一致で可決・成立し、インターネットを利用した選挙活動が解禁された。夏の参議院選挙から適用される改正法により、候補者や政党と有権者の距離が近くなることが期待されているが、それだけでなく、巨大な経済効果を生みだすという見方もある。

 とくにIT企業各社に多大な恩恵をもたらすことは間違いなさそうだ。従来、投資家たちが考えていた選挙関連銘柄は、投票箱や投票用紙、投票用紙計算機などの設備を取り扱う企業や、選挙運動に必要な備品類や文具類、封筒メーカー、音響機器設備などだった。しかし、今夏の参議院選からはネット関連企業も選挙関連銘柄に加わることになるだろう。

 米国の例をみると、昨年のオバマ氏とロムニー氏の大統領選の際、ネット関連に使われた金額は7800万ドル。日本円にして約77億円にのぼる。また、同じくアメリカで政治関連のネット広告費は年間1億5920万ドルといわれ、この数字は年々増加傾向にある。さすがにアメリカの規模には及ばないにしても、日本でも巨額の選挙資金が動く可能性が高い。そして、これを見越して、すでに大手IT関連企業各社がネット選挙への対応策を続々と打ち出している。

 例えば、若者世代を中心に圧倒的な人気を誇り、国内で4500万人以上が利用しているといわれるLINEは、政党の要件を満たす全政党を対象として、「LINE」の公式アカウントを無償提供することを発表している。また、「Amebaブログ」、「Amebaピグ」などを運営しているサイバーエージェントも、「オフィシャルブログ開設の支援」「ライブ動画配信サービス『AmebaStudio』における政治をテーマにした新レギュラー番組の配信」「アメーバピグ内でのアンケート調査や政治座談会の開催」「政党によるインターネットプロモーションの支援」など、政党や政治家の活動を支援する取り組みを推進する方針を明らかにしている。政党側としても、これら2社の運営するシステムを効果的に利用できれば、これまで政治に関心の薄かった世代にもアピールでき、浮動票獲得への大きな力となるだろう。

 また、マーケティングリサーチ事業を展開するマクロミルも、これまで培ってきたマーケティングのノウハウを応用し、民意を政策に反映させるのに役立ちそうな「政党向けリサーチサービス」を検討しているという。さらに、公開討論会などで話題になったインターネット動画配信サービスの「ニコニコ動画」なども、今後さらに、情報発信の場として利用される機会が増えるとみられ、運営会社であるドワンゴの業績にも大きな影響を与える可能性が高い。

 こうしてみてみると、選挙は一大公共事業といえなくもない。今回の改正法の成立によって、日本経済の活性化に繋がることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)