【2】小売業大手各社の今期の見通し、戦略とは

2013年04月22日 09:05

消費税引き上げ前の駆け込み需要とアベノミクスの個人消費刺激効果で、2014年2月期の見通しはおおむね明るい。

 コンビニ/出店、出店、また出店でいいのか

 セブン&アイHD<3382>の「セブンイレブン・ジャパン(日本法人)」のチェーン全店売上高は6.9%増の3兆5084億円、営業総収入は7.2%増の6175億円、営業利益は2.0%増の1867億円、最終利益は11.6%増の1124億円だった。1354店を新規出店し閉店は287で店舗増が年間1000店を超えたが、新店との食いあいもあり既存店売上高伸び率は前期の6.7%から1.3%に急減した。商品面では総菜などの品揃え拡充や利益率の高いPB 商品の好調さが貢献した。今期の見通しは、チェーン全店売上高が6.1%増の3兆7230億円、営業総収入が7.8%増の6660億円、営業利益が9.8%増の2050億円。過去最高の1500店舗を新規出店し国内総店舗純増は1150の見込みで、0.5%に落ち込む既存店売上高の伸び率を新店効果でカバーしてさらなる増収増益を狙う。今期も「出店、出店、また出店」という戦略だ。

 ローソン<2651>の営業総収入は1.8%増の4874億円、営業利益は7.2%増の662億円、最終利益は33.3%増の331億円だった。938店舗を新規出店したのに加え、PB商品が好調で営業最高益を更新。しかし、新店効果は出ても既存店売上高はほぼ横ばいだった。今期の見通しは、営業総収入は5.9%増の5160億円、営業利益は5.7%増の700億円、最終利益は8.2%増の359億円。年間配当は10円増配して210円。新規出店は870で前期よりも少なく、新浪社長は「無理な出店はせず既存店の改善で攻める」「売上より収益を重視する」と話している。

 ファミリーマート<8028>の営業総収入は1.5%増の3340億円、営業利益は1.2%増の431億円、最終利益は50.9%増の250億円だった。既存店売上高は2%弱のマイナスだが900あった新規出店の新店効果でカバーし、タイ子会社の売却益が最終利益を押し上げた。今期の見通しは、営業総収入は6.0%増の3541億円、営業利益は4.6%増の451億円、最終利益は10.1%減の225億円。年間配当は2円増配して102円。PB商品の増強などで既存店売上高を1%のプラスにする見込みだが、それ以上の戦略ポイントが新規出店1500店舗。営業総収入約2倍のセブンイレブン・ジャパンと同数で、閉店数を引いた店舗純増数も1150でピタリと合わせて対抗意識むき出し。社運をかけた大量出店作戦に踏み切る上田会長は「今後3年間は市場の争奪戦」、中山社長は「つぶしあいが始まる勝負の年」と、全国的に激戦必至のコンビニ商戦の臨戦態勢を強調した。

 今期のコンビニの派手な新規出店攻勢にはアナリストや流通専門家からの批判も多く、ファミリーマートの今期の新規出店1500が「セブンイレブンと同数とはいくら何でも多すぎる」と辛口の評価を受けて株価が下落する一幕もあった。一方、ローソンの今期見通しは「弱気すぎる」とされてこれまた株価が下落した。外食、レジャーからコンテンツまで個人消費のあらゆる部分に関わることができ、戦略次第で他業態の領域にも食い込んで業績を大きく伸ばす可能性を秘めたコンビニだけに、注目度も期待も大きい。