NYダウは157ドル高で前日の下落幅の6割戻し。3月の消費者物価指数(CPI)、建設許可件数、住宅着工件数などの経済指標は市場予測を上回り、原油や金の先物価格も切り返して株式市場も落ち着きを取り戻した。リスクオフの円買いは一日限り有効で、17日朝方の為替レートはドル円が97円台後半、ユーロ円が128円台後半まで円安が進行。外部環境の好転で反発が期待された日経平均は109.06円高の13330.50円で始まり、その後は円安が進行してドル円が98円台、ユーロ円が129円台に乗せたこともあり終始13300円台の小動きで静かに推移した。G20前の様子見ムードで為替のドル円100円台、日経平均の13500円台を目指す動きは見られない一方で、IMFの世界経済見通しが日本の成長率を上方修正するなど、アベノミクスや日銀の異次元緩和へのリスペクトは世界に浸透しつつある。日経平均は後場に13400円まであと3円に迫り、終値は161.45円高の13382.89円と4日ぶりに反発した。TOPIXは+16.81の1136.01で、日経平均より上昇率が大きい。市場が安定感を取り戻すのと引き換えに売買はやや低調で売買高38億株、売買代金2兆7920億円で、3兆円超えが連続9日でストップした。
値上がり銘柄が1361と東証1部全体の8割を超え、33業種騰落率で下落は電気・ガスと食料品の2業種だけ。上昇率が低いのは金属製品、陸運、水産・農林、倉庫など。上昇率が大きかったのは海運、その他金融、銀行、不動産、輸送用機器、証券などだった。
TOPIXの上昇を支えたのがメガバンクで、特に三井住友FG<8316>の175円高が大きかった。証券は野村HD<8604>こそ18円安だったが、SBIHD<8473>が282円の大幅高で年初来高値を更新し、値上がり率1位、売買高10位、売買代金5位とひときわ目立っていた。値上がり率ランキングでは11位に岩井コスモHD<8707>、13位にいちよし証券<8624>も入り、大和証券G<8601>も38円高で年初来高値を更新した。大手不動産はアウトレットの増床が報じられた三井不動産<8801>の105円高をはじめ三菱、住友、東急いずれも反発したが、東京建物<8804>は反落し4円安だった。
前日大幅安のソフトバンク<9984>は50円高。金や原油の市況が回復しても商社株は上昇気流に乗れず、今週2日間で91円も下落した三井物産<8031>は7円高、三菱商事<8058>は12円高と小幅高にとどまった。ネットセキュリティのデジタルアーツ<2326>は293円高で値上がり率2位に入りこれで6連騰。ネット選挙関連として前日まで2日連続ストップ高のデジタルハーツ<3620>はストップ高ではなくても339円高で値上がり率3位に入った。バイオ関連の生化学工業<4548>はみずほ証券が投資判断を引き上げストップ高の150円高で年初来高値を更新し値上がり率6位。日本農薬<4997>は9月期通期の業績予想を上方修正した上に野村證券の投資判断の引き上げもあり、年初来高値の100円高でストップ高比例配分になり値上がり率10位に入った。同じ農薬大手のクミアイ化学工業<4996>も54円高で年初来高値を更新している。
業種別騰落率トップの海運は商船三井<9104>が15円高で年初来高値を更新し、日本郵船<9101>は6円高、川崎汽船<9107>は9円高。自動車は好調で、トヨタ<7203>はS&Pが社債格付けの引き上げを発表して100円高、ホンダ<7267>は90円高、日産<7201>は33円高、マツダ<7267>は18円の大幅高。15円高のいすゞ<7202>、30円高の日野<7205>、36円高の富士重工<7270>は年初来高値を更新した。電機では東芝<6502>が29円の大幅高で年初来高値を更新したが、賃下げに合わせて会長、社長の報酬半減を発表したパナソニック<6752>は3円高とふるわず、シャープ<6753>は8円安だった。電力は前日に続き売り込まれ業種別騰落率で最下位になり値下がり率ランキングをにぎわせたが、東京電力<9501>は20円安のこの日も売買高、売買代金ともに1位になっていた。
インテルの1~3月期決算はパソコン不況のあおりで売上高は市場予測に届かず、最終利益は25%減と悪く、通期の設備投資計画額も下方修正。しかし半導体製造装置の東京エレクトロン<8035>は35円高、半導体検査装置のアドバンテスト<6857>は27円高と堅調だった。インテル関連として名が挙がるイビデン<4062>も12円高だったが、新光電気工業<6967>は35円安。半導体基板の需要が低下したとメリルリンチ証券が投資判断を引き下げたのも悪材料になった。
この日の主役は「共同開発」「共同出資」の材料が出た銘柄。IHI<7013>はインフルエンザワクチンをアステラス製薬<4503>からの委託で生産するという記事が出て19円高で年初来高値を更新し売買高14位に入った。防衛関連銘柄の大御所だがインフルエンザ関連銘柄としてもデビューした。アステラス製薬は値動きなし。ワクチンを実際に製造するのはIHIとUMNファーマ<4585>の共同出資会社で、マザーズのUMNファーマは年初来高値の705円高でストップ高比例配分になる人気ぶりだった。コマツ<6301>は建設業の人手不足解消に貢献する自動建機として自動運転のできるブルドーザーを6月に北米市場に投入するというニュースで40円高と4日ぶりに反発した。これを共同開発するのがトプコン<7732>で、97円高で年初来高値を更新し値上がり率19位に入っている。前日設立されたソニー<6758>とオリンパス<7733>の共同出資会社「ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ」は、記者会見で外科手術用内視鏡で2020年に売上700億円を目指すと発表。ソニーは36円高、オリンパスは54円高で年初来高値を更新した。なお、昨年9月にオリンパスに提携を袖にされたテルモ<4543>は160円高で年初来高値を更新していた。(編集担当:寺尾淳)