【1】小売業大手各社の今期の見通し、戦略とは

2013年04月22日 01:44

 消費税引き上げ前の駆け込み需要とアベノミクスの個人消費刺激効果で、2014年2月期の見通しはおおむね明るい。

 小売業の2013年2月期決算が出揃った。百貨店、スーパー、コンビニ、専門店とも、2月末で終わった決算期はアベノミクスの本格始動前で、一部の企業では震災特需の反動減という要素などもあり内容はおおむねかんばしくなかったが、2014年2月期の決算見通しはおおむね明るいものになっている。その根拠として「消費税引き上げ前の駆け込み需要」が特に下期から出てくることを挙げる企業が多いが、アベノミクスの政策効果で個人消費が活発になり、それが売上増、業績向上に寄与するというシナリオを描いている企業もある。たとえば為替の「円安」という要素一つとっても、輸入物価の上昇で来店客の足が遠のき売上が減ると心配される側面もあれば、滞在費用が安くなって訪日外国人観光客が増えることで来店増、売上増が見込めるという側面もあり、プラスかマイナスか、単純に割り切ることはできない。株価の上昇による資産効果、賃上げやボーナスの増額による効果、住宅の販売が盛り上がることによる家具や家電などへの波及効果、景況感からくる消費のムードの好転など、個人消費に影響して小売業の業績を左右する要素は複雑にからみあう。強気の業績見通しで大量出店、大幅増床を計画する企業もあれば、控え目な業績見通しで投資計画も前年並みという企業もあり、そこには財務の余裕度や競合の状況などもからんでいる。2月期決算の決算短信などから、小売業大手各社の今期の見通しや戦略などを浮き彫りにする。

百貨店/高額商品は売上よりも利益に貢献

 大丸と松坂屋のJフロントリテイリング<3086>の売上高は16.1%増の1兆927億円、営業利益は42.9%増の308億円、最終利益は35.2%減の121億円だった。昨年10月にリニューアルした大丸東京店が好調で、昨年8月に連結子会社化したパルコも下期の収益に貢献したが、法人税の負担増で最終利益は減益になった。今期の見通しは、売上高が5.2%増の1兆1500億円、営業利益が29.6%増の400億円、最終利益が138.0%増の290億円。年間配当は1円増配して10円。パルコの収益が通期で効いてくる上に、ピーコックストアのイオンへの売却に伴う特別利益を計上するためで、百貨店本体の売上増はあまり期待していない。

 高島屋<8233>の営業収益は1.4%増の8703億円、営業利益は20.7%増の254億円、最終利益は51.8%増の165億円だった。百貨店本体では高額商品の販売が好調で利益を押し上げ、子会社の不動産事業やカード事業も貢献した。今期の見通しは、営業収益が3.1%増の8970億円、営業利益が9.9%増の280億円、最終利益が1.0%増の167億円。年間配当は10円で変わらない。既存店売上高は横ばいでも資産効果で富裕層向けの商品の販売がさらに伸び、リニューアルした横浜店の改装効果が通年で貢献すると見込んでいる。

 セブン&アイHD<3382>の「そごう・西武」の売上高は2.4%減の7984億円、営業利益は10.0%減の100億円、最終損益は36億円の赤字(前期は99億円の黒字)だった。2店舗を閉店して既存店売上高が0.9%増と改善している。今期の見通しは、売上高が0.2%増の8000億円、営業利益が19.5%増の120億円。新規出店も閉店もないが既存店売上高が2.3%伸びると見込んでいる。

 百貨店の復活のカギは多角化、リニューアル効果、利幅の大きい高額商品といったところだが、採算の悪い店舗を縮小、閉店したり、収益性の低い子会社を売却して有望な小売企業をM&Aするような思い切った事業再編に乗り出すには、個人消費が上向きで投資環境が良くなる見通しがある今年あたりはチャンスだろう。