NYダウは今年最大の265ドル安で14600ドル割れ。中国のGDP成長率や住宅・建設関連指標が市場予測を下回り、原油や金などの先物市場が大幅に下落したのに加え、取引終了直前にボストンマラソンのゴール付近で爆弾テロが起きて死者が出てさらに下げた。2007年の最高値も下回って史上最高値更新の〃宇宙旅行〃から帰還した地球上は火薬の匂いに満ちている。16日朝方の為替レートはドル円が一時95円台になり97円近辺、ユーロ円が一時125円台になり126円半ばと乱高下しつつ円高が大きく進行。大幅下落して13000円割れの予感をはらみながら日経平均は251.75円安の13023.91円で始まった。
しかし底値は13004円で13000円の「甘利越えライン」を割りそうで割らず底堅い展開。東京の金先物市場はサーキットブレーカーが何度も発動されるなど大荒れだったが、株価のほうは為替の乱高下がおさまれば平穏で午前10時すぎには13100円台に乗せ値上がり銘柄も増えていく。後場は13200円台にも乗せて、前日比プラスにもたびたびタッチした。午後2時すぎの速報「韓国の軍事境界線付近で米軍ヘリ墜落」にも市場は平静だったが、終値は54.22円安の13221.44円で3日続落した。それでも13000円割れ寸前から押し戻して300円を超える上昇をみせプラスの時間帯もあった点に今の日本株の強靱さがうかがえる。TOPIXのほうは-14.79の1119.20と下落幅が大きく、売買高は43億株、売買代金は3兆4403億円だった。
値下がり銘柄数が東証1部全体の73.6%もあったため、上昇セクターは医薬品、サービス、ガラス・土石の3業種だけ。小売、食料品、その他金融、証券などの値下がり率が小さかった。最も大きく下落したのは銀行で、鉱業、卸売、非鉄金属、パルプ・紙、電気・ガスがそれに続いた。
ファーストリテイリング<9983>は450円高だが午前9時の最安値と午後1時11分の最高値の差が1750円もあり、日経平均の300円を超える変動の原動力になっていた。逆にKDDI<9433>はほとんどの時間帯がプラスで80円高。60円高のファナック<6954>も後場はほぼ安定していた。
銀行はメガバンクも地銀も軒並み安で、みずほ<8411>が3円安、三菱UFJ<8306>が24円安、三井住友FG<8316>が155円安になり広島銀行<8379>が30円安で値下がり率9位に入るなど下げ幅も大きい。野村HD<8604>は7円安。大手不動産はプラスの時間帯もあったが終値は住友不動産<8830>170円安、三菱地所<8802>75円安、三井不動産<8801>85円安とマイナスで、プラスは16円高の東京建物<8804>ぐらい。連騰が続いていた電力株はさすがに勢いが止まり、北海道電力<9509>が値下がり率7位、関西電力<9503>が同15位。それでも値動きなしの東京電力 は売買高2位、売買代金1位と取引は相変わらず多かった。この日はトヨタ<7203>が90円安、ホンダ<7267>が65円安など時価総額の大きい大型株が不振でTOPIXの足を引っ張り、商品市況の下落を受け大手商社株も揃って下落した。一方、数少ないプラス業種の医薬品は塩野義<4507>が112円高で値上がり率15位に入って年初来高値を更新し、アステラス製薬<4503>が100円高。武田<4502>も20円高だった。
値上がり率1位は工作機械メーカーのOKK(大阪機工)<6205>で、売買高11位と買われ39円高で年初来高値を更新した。「その他金融」が値上がり率ランキングをにぎわせ、5位のNECキャピタル<8793>は450円高で年初来高値を更新し、64円高で11位のアイフル<8515>は売買高9位、売買代金10位と買いを集め、クレディセゾン<8253>は160円高で12位に入った。
経済産業省が新潟県の佐渡島南西沖の日本海で石油・天然ガスの試掘を始めたと発表して日本海洋掘削<1606>が買われ260円高で値上がり率18位。三井海洋開発<6269>は一時166円高まで買われ終値は37円高。だが同じ資源関連でもNY金市場の33年ぶりの急落と東京金市場の混乱で、鹿児島県の菱刈鉱山を所有する住友金属鉱山<5713>は63円安で4日続落。金地金を商う三菱マテリアル<5711>も11円安で、東証上場の金ETFも軒並み下落した。
この日、ソニー<6758>とオリンパス<7733>の共同出資で「ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ」が設立され、オリンパスは上昇して50円高になったが、ソニーは売られ68円安。シャープ<6753>は売買高こそ5位と多かったが12円安で連騰は8日でストップした。ブラザー工業<6448>は2012年1月に経営破たんしたイーストマン・コダックのスキャナー事業を約200億円で買収する契約を締結と発表したが、8日連騰した後でもあり終始マイナスで22円安だった。大和ハウス工業<1925>は旧リクルートコスモスのマンション大手コスモイニシア<8844>を約100億円で買収するというニュースで買われ40円高。買収される側のジャスダックのコスモイニシアは150円高でストップ高比例配分になっていた。
3月期決算の業績観測報道によると信越化学<4063>は経常利益が3%増で90円高。一方、マルハニチロHD<1334>は最終利益が77%増でも事前予想より下振れしたため2円安だった。前日に2月期決算を発表した映画大手は、歌舞伎座開場効果で経常増益見通しの松竹<9601>は8円安、経常減益見通しの東宝<9602>は21円高と、決算見通しの内容とはあべこべの結果になった。
この日の主役はソフトバンク<9984>。スプリント・ネクステルの買収がアメリカの連邦通信委員会(FCC)で審査中だが、衛星放送会社のディッシュ・ネットワークが255億ドルの買収提案を行い対抗馬として浮上というニュースが流れた。ソフトバンクが合意済みの買収額201億ドルの上積みを余儀なくされるコスト増懸念で株価は安く始まったが、午後2時30分頃に会社側が「従来の合意条件で買収を7月1日に完了する」と表明して一時155円安まで下げ幅を圧縮したものの結局320円安で終わって値下がり率ランキング2位になり、日経平均を38円も押し下げた。もしスプリントをディッシュ社にさらわれると昨年10月に買収合意して普通社債の発行まで行って資金を用意した苦労が水の泡になり、痛手は大きい。(編集担当:寺尾淳)