夏の暑い日に外出先から帰宅して家に入ると、ムッとした暑さに耐えきれず、すぐにエアコンのスイッチを入れた経験はないだろうか?室内の空気環境を快適にするため、帰宅後すぐに温度を適温まで下げたいとは誰もが思うことだろうが、実はこの行為、室内で濃度が急上昇したある物質を部屋中に拡散することとなり、かなり危険度が高いようだ。
この行為に警鐘を鳴らすのは、住宅最大手の積水ハウス <1928> 。同社が自社の研究所において室内の空気環境に関する実験を行ったところ、何ら換気対策を施していない部屋では、室温が高くなる夏場に有害化学物質のホルムアルデヒド濃度が異常に高くなることがわかった。ホルムアルデヒドの濃度は温度に依存し、冬場に比べて室内の温度が上昇する夏場には、その濃度が実に約10倍も上昇するのだという。しかも、エアコンで室温を低下させるだけでは一度上昇した濃度は下がらないというから厄介だ。
一方で、2003年の改正建築基準法の施行により設置が義務化された24時間機械換気を常時運転しておけば、濃度は2分の1程度に低減し、さらに一定時間窓を開けて通風換気をすると濃度は大幅に低減することも確認できており、換気対策を怠れば室内の空気環境がいかに危険な状態になるかがよくわかる。
この実験結果を踏まえ、同社が一般生活者を対象に実施したアンケート調査において夏場の室内空気環境に関する行動を聞くと、約半数もの人が「夏の暑い日は帰宅後すぐにエアコンのスイッチを入れる」と回答したという。
ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こす原因物質の一つとされている。夏場、外出先から帰宅した際に、すぐにエアコンをつけてうだるような暑さの室内を快適にすれば、一見室内空気環境も改善されたように感じる人も多いようだが、外出時も24時間機械換気を常時運転し、エアコンを付ける前に一定時間窓を開けて通風換気をするなどの余裕を持たなければ空気環境は改善されないので注意が必要である。
また、化学物質についてはこの程、環境省が約10万人の子どもを対象に日常生活で触れる化学物質が子どもに与える影響を調べるための全国調査を今年度より実施すると発表している。来年1月以降の3年間に、産科などで妊婦に呼びかけ、その後に生まれた子どもの健康状態を半年ごとに調査。アトピーやぜんそくなどの子どもが増えている背景や化学物質との関連を探ることを目的としており、化学物質に対する社会の関心が高まっていることが伺える。
「空気」は、我々が生きていく上で最も身近で欠かすことができない存在。我々が一日に摂取するものの中で最も大きな割合を占める。だがらこそ、食べ物や飲み物と同様に「空気の質」にも配慮することが重要である。その必要性を個々が認識し、換気対策などできる範囲で行動していくことが、健康で快適な暮らしにつながることを理解しておきたい。
(編集担当:宮園奈美)