携帯電話大手3社が7日に発表した11月末時点の携帯電話の契約数によると、新規契約から解約を差し引いた純増数は、ソフトバンクモバイル(ソフトバンク)が30万1900件と11カ月連続の首位。2位はKDDI (au)で純増数は22万8800件だった。
この好調の2社とは対照的に、苦しい状況に立たされているのがNTTドコモ(以下、ドコモ)だ。シェアトップの座は維持したものの、4万800件の純減と、2007年8月以来、5年3カ月ぶりで過去最悪の数字となった。11月は、「iPhone 5」という強力な武器を持つ、ライバル2社の勢いに飲み込まれ、かなりのユーザーを失う流れになったようだ。しかし、12月に入るとシャープの最新液晶パネル「IGZO(イグゾー)」を搭載したスマートフォンが、「iPhone 5」(ソフトバンクとKDDI、別々に集計)をおさえて、スマートフォン販売で2週間連続トップと好調な売れ行きで、復調の兆しを見せ始めている。
そんな状況の中、ドコモはライバルとの差別化を図るために、勢いのある韓国や中国企業との連携を急いでいるようだ。今年の10月には、韓国の通信事業者KTと共同で、国際標準規格(NFC)に対応した韓国の電子マネーサービス「キャッシュビー」をドコモのスマートフォンで利用するためのシステム開発を推進すると発表している。さらに今月の11日には、韓国のIT企業であるアールサポート(以下、アール車、本社ソウル市)と資本・業務提携したと発表。スマートフォンなどの画面を遠隔操作できるアプリ開発を得意とするアール社と手を組むことで、スマホ向けサービスの開発・強化を推進していく方針だ。
iPhoneを取り扱っていないドコモにとって、世界シェアでリードしている米グーグルのOS「アンドロイド」を搭載した韓国サムスン製のスマホ「ギャラクシー」シリーズが頼みの綱になっている状況に変わりはないだろう。今年に入ってからは、中国ファーウェイ製や韓国LG製など、実績のある海外メーカーのスマートフォンをラインナップに加え、iPhone陣営に対抗しようとしている。
もともとNTTグループは日本のメーカーとのつながりが深かっただけに、このような一連の流れに「何故?」と疑問を抱く国内ユーザーも多いかもしれない。理由として考えられるのが、国内市場は既に飽和状態にあることから、ドコモとしては、将来の海外展開を視野に入れて、世界的に販路を持つサムスンなどの力を利用して、国際的な競争力を高めていきたいというところだろう。それに、スマートフォン分野において開発のスピードやコスト面などで優位性のある韓国や中国の大手企業と手を組むことは、継続的に利益を追求していかなくてはならない民間企業にとっては当然の流れだとも理解できる。
しかし、勢いを増す中国や韓国勢の力に頼ってばかりでは、日本国内において王者の座に君臨し続けてきた地位も揺るぎかねないだろう。ドコモとしてはアンドロイド陣営一択の戦略を続けるか、利益よりも失った国内シェアの奪還を優先してiPhone導入に踏み切る戦略に転換するか、決断の時期が近づいている考える声も少なくない。そして、何よりも、前述のシャープの「IGZO」スマートフォンが発売直後から多くのユーザーに支持されているように、スマホやタブレット分野において出遅れた日本メーカーが、その高い技術力を武器に海外勢に肉薄する日をドコモ自体も待っているのかもしれない。