一時期もてはやされた3Dがすっかりとなりをひそめてしまい、映像業界は王道である高画質を求める方向へと戻った。しかも、時代は1920×1080のフルハイビジョンから、縦横2倍、面積比で4倍の値をもつ4098×2160ドットの4Kへと急速に移行しつつあり、テレビやモニターなどの「映す」機器も、カメラや編集機材の「撮る」機器も、徐々にではあるがラインナップが充実しはじめている。
国内メーカーも今夏のボーナス商戦に向けて4Kテレビをこぞって投入する動きを見せており、インチ1万円をきる価格での提供となりそうだ。ソニー<6758>は、同社国内向けの4Kテレビ第2弾となるBRAVIA X9200A シリーズを、55型・65型の2モデルで6月1日に発売する。市場推定価格では、55インチが50万円、65インチが75万円前後で提供される見通しだ。
また、東芝<6502>も、4月に東京ビッグサイトで開催された「第23回ファインテックジャパン」に、日本国内では初めて4K対応の「REGZA」84型と65型を参考出展しており、最終調整を行ったうえで、今夏の発売をにおわせている。
そんな中、早くも4Kを越えるスーパーハイビジョン・8Kの開発が急速に進んでいる。
NHK放送技術研究所が中心となって研究開発が進められている7680×4320の8K解像度について、NHKは9日、三菱電機株式会社<6503>は共同で、世界初となる8K対応のHEVC符号化装置の開発に成功したことを発表し、さらには16日、時空間符号化の手法を用いた「単一周波数ネットワーク」(SFN)によるスーパーハイビジョンの地上伝送実験に成功したことを発表した。
これまで、スーパーハイビジョンの地上伝送には、中継局で送信した信号を自ら受信してしまう「回り込み」などの影響で受信品質が劣化してしまうという課題が挙がっていたが、今回の時空間符号化を用いたSFN技術により、安定した受信が可能になったという。
これらの研究成果は、5月30日から6月2日まで東京のNHK放送技術研究所で開催される「第67回 技研公開2013」の中で、他のスーパーハイビジョン関連の研究や、放送通信連携サービスを実現するハイブリッドキャストに関する研究、有機ELディスプレイ開発など37の研究成果の一つとして展示され、一般公開される予定だ。
わが国の次世代の映像技術を知る上でも、大変興味深い公開内容となりそうだ。(編集担当:藤原伊織)