今年の冒頭に開催された世界の名だたる電化製品見本市では、昨年までの3Dテレビはなりをひそめ、4K画質の液晶テレビを紹介するメーカーが軒を連ねた。しかし、高画質化への動きは、何も液晶テレビだけに限った話ではない。
PC業界にもまた、同じように高画質の波が押し寄せようとしている。
今や、テレビではなく、PCの画面でフルHDのストリーミング放送やブルーレイの映像を楽しむ時代だ。マニアでなくとも、より高画質、高精細のディスプレイを一般ユーザーが求めるのも当然の流れといえる。とくに昨年秋頃くらいから、WQHDのディスプレイが注目されている。WQHDとは、ディスプレイ画面の表示画素数をあらわす呼称で、HD解像度(1280×720)の4倍となる。
これまで、WQHDのディスプレイといえば、安くても10万、20万円は当たり前。一般のユーザーには敷居の高いものだった。
ところが昨年末から、10万円を切るモデルが、各メーカーから続々と提供されているのだ。たとえば、米アップルのApple Thunderbolt Display MC914J/A(27インチ)は実売価格8万円前後と、アップルのモニタとしては安い部類になっている。また、株式会社アイ・オー・データ機器<6916>のLCD-MF271CGBRは実売45,000円〜50,000円程度、おなじみのDELLも同じく27インチDELL U2713HMを49,980円という価格で提供している。
そんな中、シャープ<6753>は5月14日、業界最高水準の画素密度となるノートPC向けIGZO液晶パネル3タイプの生産を亀山第2工場で6月から開始すると発表した。
今回生産が発表されたのは、15.6インチ/3200×1800ピクセル(WQHD+、235ppi)、14インチ/3200×1800ピクセル(262ppi)、11.6インチ/2560×1440ピクセル(WQHD、253ppi)の3タイプとなる。IGZOは、シャープが世界で初めて量産化に成功した、透明な人工酸化物半導体。
液晶パネルなどには通常、非晶質半導体のアモルファスシリコンが広く応用されているが、IGZOはそれに比べて20~50倍で電流を流すことができるのが特徴。その電子移動度の高さによって、同じ透過率のものと比較して、約2倍の高精細化を実現している。
しかし、ノートPCユーザーにとって、気になるのは消費電力だ。画質のクオリティが上がれば、それだけ電力消費も大きくなるに違いないと思ってしまうだろう。
ところが、IGZOの最大の強みは、高精細ながら、圧倒的な低消費電力にある。ディスプレイ消費電力を5分の1から最大10分の1にまで軽減することに成功しており、モバイルシーンの多いノートPCの長時間駆動には最適だといえる。