山田養蜂場は、奈良女子大学の小城勝相(こじょう しょうすけ)教授、市育代(いちいくよ)助教と共同研究を行い、ブラジル産プロポリスが体脂肪を減らし、血清の脂質を低減させる作用があることを動物試験にて明らかにした。
今回の実験では、ラットを20%のラードを含む高脂肪食のみ与えた対照群、同高脂肪食に0.05%のプロポリスを混ぜて与えた低用量群、同高脂肪食に0.5%のプロポリスを混ぜて与えた高用量群の3群に分け、8週間飼育を行った。その後、各組織(睾丸、肝臓、腸間膜周り)の体脂肪の量、血清、肝臓に含まれる脂質の量を測定した結果、プロポリスを与えた場合、高脂肪食のみを与えた対照群よりも腸管膜や腎臓周りの脂肪、全白色脂肪(内臓に蓄積する脂肪)、血漿、肝臓に含まれるコレステロールとトリグリセリド(中性脂肪)の量が減少した。
さらに、脂肪の蓄積や代謝に関わる4種類のタンパク質の量を測定すると、高用量のプロポリスを摂取した場合、脂肪細胞を分化させ、脂肪を蓄積させるPPARγと、トリグリセリドを作るSREBP-1が減少し、脂質をエネルギーに換えるPPARαが肝臓で増えていた。つまり、プロポリスによる体脂肪の減少及び血漿や肝臓でのトリグリセリドの減少には、これらのタンパク質の増減が関与しているといえる。また、コレステロールを作るHMG-CoA還元酵素量が対照群に比べ減少しており、プロポリスはこれらを減少させることでコレステロールの体内合成を抑えていることがわかった。
また、脂肪の吸収度を調べるため、ラットを、プロポリスを与えない対照群、低用量群(プロポリス42.5mg/kg)、高用量群(425mg/kg)に分け、12時間絶食させた後、各用量のプロポリスを与えた。30分後オリーブ油(5ml/kg)を与え6時間後まで2時間ごとに採血し、血液中のトリグリセリドの量を測定。すると、プロポリスを与えた群では、トリグリセリド量が低い値を示し、プロポリスには脂肪の吸収を阻害する作用があるということも明らかになった。
これらの実験より、体脂肪が減少するだけでなく、血清や肝臓の脂質の量も減少し、プロポリスが脂肪の吸収を阻害することがわかった。つまり、近年増加する脂質異常症(高脂血症)から発症する脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患やメタボリックシンドロームの改善にプロポリスが役立つ可能性が示唆される。
これまで、ブラジル産プロポリスは抗菌作用や抗炎症作用、抗腫瘍作用、抗酸化作用、抗アレルギー作用など様々な薬理学的作用を持つことが明らかになってきた。今回の実験では、生活習慣病に関係する脂質の代謝に対しても効果がみられたことで、プロポリスの新たな作用が見出された。