発毛専門の毛髪クリニックリーブ21は、スウェーデンのディグニターナ社と、抗がん剤の副作用による脱毛を防ぐ医療機器『ディグニキャップ(DigniCap)』の日本における独占販売代理契約を締結した。
近年の抗がん剤による治療法は進歩し、優れた治療実績をあげている。しかし、その副作用として、嘔吐や食欲不振、白血球減少など、様々な症状に悩まされている患者が多いのも事実。中でも、抗がん剤治療によって生じる脱毛は、治療後に再び髪が生えてくることや、身体機能への直接的な影響が少ないことから、これまで他の副作用に比べると積極的な対策がとられていなかった。しかし、外見が明らかに変化する脱毛は、患者にとっては大きな精神的苦痛になっていた。そこで今回、発毛に関する研究を行っているリーブ21は、治療を受ける患者が抱える脱毛による精神的ダメージや心の痛みを和らげることを目的に開発された「ディグニキャップ」の日本における独占販売代理契約をディグニターナ社と結んだ。
「ディグニキャップ」は、抗がん剤治療中の患者の頭皮を均一に一定の温度で冷却することで脱毛を予防・軽減する、スウェーデンのがん治療専門看護師、ドクター及び大学教授らにより開発された医療機器。コントロールパネル付き冷却装置本体とシリコン製キャップにより構成されており、二人の患者が同時に利用することが可能となっている。この装置を使って頭皮を冷却することによって、抗がん剤の血中ピーク時において、血管収縮作用により毛包への血流が抑制され、また代謝活性が低下。このことで、抗がん剤による毛包へのダメージを低下させ、脱毛予防・軽減に繋がる仕組みとなっている。
この頭皮冷却装置は、シリコン製キャップの装着が簡単な上、徐々に頭皮が冷却されるので、違和感が少なく、爽快感、快適性の持続が可能といった利点もある。また、シリコン製キャップには、独自開発された迷路状の溝があり、冷却液が全体を一定の速度で流れ、装置本体に戻る仕組みで、温度センサーによる微妙な温度調節も可能になっている。
ヨーロッパにおいては、スウェーデンをはじめ、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの北欧だけでなく、イギリス、ドイツ、フランスなどの医療機関への導入が進んでおり、利用患者数はすでに5000人以上に及ぶという。さらに、2001年から2007年の間に北欧のクリニックで治療を受けた患者への調査によると、2249名の患者(主に乳がんと卵巣がんの患者)のうち、1922名がかつらを必要としていないという報告もされている。
リーブ21では、アジアの一部及びオセアニアでの独占販売権獲得の交渉を進めており、今後さらに、頭皮冷却装置の販路を世界に拡大していくとともに、日本国内での生産も検討しているという。さらに、頭皮冷却装置の日本における医療機器承認を取得し、年内にも首都圏の複数の施設にて治験を開始し、2011年秋をめどに国内導入を行う予定。脱毛予防のための頭皮冷却装置を広めることにより、社会に貢献し、抗がん剤治療を受ける患者の脱毛による精神的苦痛を少しでも和らげることができるようにサポートしていきたいとしている。
(編集担当:北尾準)