国内におけるEVを巡る取り組み

2012年10月22日 11:00

 電気自動車(EV)の急速充電規格につき世界標準規格の座を争っていた、「チャデモ方式」と「コンボ方式」。「チャデモ方式」は国内自動車メーカーがすでに採用し実用化が進んでいるが、一方の欧米の自動車メーカーが推進している「コンボ方式」は、未だ実用化されていない。この急速充電規格につき、米国の自動車技術者協会が「コンボ方式」を採用すると発表した。この発表を受け日本メーカーが世界で孤立・ガラパゴス化する可能性があると報じられる一方、国内での普及促進は拍車がかかったようである。

 ココストア、サークルKサンクス、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ミニストップ、ローソン、中電オートリース、中部電力の9社が、愛知県内21箇所のコンビニエンスストアに電気自動車用急速充電器を設置し、10月25日から順次運用開始すると発表。合同会社充電網整備推進機構が提供する会員制急速充電サービスに入会することで、本取り組みによりコンビニエンスストアに設置された急速充電器を、24時間365日利用することが出来るという。

 さらにJTBグループのJTB法人東京も、栃木県那須町の那須温泉旅館組合・三菱自動車工業の協力の下、「EVモビリティ観光活性化事業」の実証実験を栃木県・那須町で開始したと発表。周辺のレジャー施設などへの二次交通が課題となっている那須エリアにおいて宿泊施設にEVを導入することで、宿泊者へのレンタカー事業とあわせて、閑散期などには業務用車両としても活用するビジネスモデルの確立を図り、宿泊施設を発着拠点とした有料のEVレンタカーの事業化を来春までに目指すとのこと。

 モーション、兼松、システムオリジン、日産、リサイクルワンの5社は、「環境省 平成24年度地球温暖化対策技術開発・実証研究事業・EVタクシーの実用化促進と運用方法確立のための実証研究」における「EVタクシー運行最適化システム(EVOTシステム)」の実証実験につき、参加事業者を39社(EV63台、PHV33台、その他LPG車両等 約2400台)にまで拡大すると発表。EVタクシーのビジネスモデルの構築と普及促進による温室効果ガス排出量削減を図っている。

 航行距離が伸びず、急速充電といえども数十分の時間を要するままで、広く一般に本格普及する日が来るとは考えにくい。ビジネスモデルの確立を目的としている実証実験が目立つもの、一般消費者への普及が思うように進まない為、取り急ぎ市場に台数を増やすことに注力せざるを得ないことの証左であろう。今やEVは、企業や自治体が「環境対策に真摯です」と自己アピールするためのツールとなってはいないか。韓国のLGケムとルノーとの間で協議されている電池工場の共同建設計画が、計画通りに進まない可能性があると報じられる程、EVは世界的に販売不振の状況にある中で、日本における今の様々な取り組みは、EVに対してあまりにも盲信的と言えるであろう。