近年、少子化が進み、共働き家庭も増加している。平成9年をさかいに、共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、その後も共働き世帯の割合が年々増加。それに伴い幼稚園の児童数が減少の一途をたどっている。その一方で保育園に子どもを入園させたい親が増え、待機児童が目立つ現状にもなっている。
幼稚園も保育所も、就学前の子供が通う施設だが、なぜ保育園ばかりに人気が集中し、待機児童が多発しているのだろうか。その理由は、この2つは目的や対象者が全く異なるということにある。例えば、文部科学省が管轄している幼稚園は、心身の発達を促す幼児教育が目的で対象は3歳以上、預かり時間は1日4時間保育が標準となっている。一方、保育所は、共働き世帯などの子供の保育が目的で0歳から入園が可能であるが、利用は原則的に両親がフルタイムで働いている場合に限られ、1日8時間保育が基本。所管は厚生労働省となっている。
簡単に言えば、幼稚園は短い時間に集中して教育に力を注ぎ、保育園は生活面全てでの自立を促しているのだ。好景気な時代は「子どもには小さな頃から徹底した教育の場を提供したい」という母親が多く、私立の幼稚園が大人気になり、幼稚園のお受験が活発化していた。しかし現在は、お受験させる親も相当数はいるものの、早急に生活を支えることが必要な経済状況に陥り、働きに出る母親が増えているようだ。そのような状況の中で、幼稚園と保育所の両方の役割を併せ持った第3の施設が登場した。
昨年10月からスタートした「認定こども園」という施設は、就学前のすべての子供が対象で、文科科学省、厚労労働省が合同で管轄する。親が働いているかどうかも不問で、幼稚園のような短時間利用にも、保育所のような長時間利用にも対応。基本的には2歳児までは保育が主体で、3歳児以上は全員に幼児教育を行い、必要に応じて保育も提供する。国が認定しているという点での安心感も大きい。
具体的な認定基準は、国の指針を参考に各都道府県が条例で認定する。これまでに認定を受けたのは秋田県の5園だが、両省が都道府県のほぼ半数を対象に行った調査では、今年度中に約100カ所、来年度以降に約500カ所の申請が見込まれている。
「認定こども園」の登場は、保育所の待機児童の解消にもつながるだけでなく、もう1つ、母親の就労先が未定でも子どもが入所できるという利点もある。子どもを抱えながら面接に行くなどの就職活動は実際には難しく、経済の窮地に立たされながらも行動がなかなか起こせず、深く悩み苦しんでいる家庭も多く存在する。”働くお母さん”が当たり前の時代に登場した「認定こども園」が、家族を支えるもうひとつ母柱を確立する大きな助け舟になることを願う。