購入の道、断たないで

2009年03月11日 11:00

 慶応義塾大学総合政策学部の國領二郎教授は一般用医薬品の通信販売についての検討会(厚生労働省・医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会)で、規制に対し反対の立場から、検討会での検討課題として4点をあげ、課題や懸念材料にどう対応するのか方策を求めた。

 同教授は①僻地や離島など薬局・薬店がないところや遠いところに住まう人たちや車などの運転に不適な高齢者が増えている地方都市、山間部、負荷が集中する大都市の「就労ママ」の増加などの状況から「移動困難な状況は高齢、過疎、少子日本の共通の大問題、病人を走りまわらせるのではなく、サービスを届けたい」②医薬品販売が「対面か通販かという形式は本質ではなく、伝えるべきことを伝え、確認すべきことを確認し、応えるべきことに応えるのが基本。ネットの方がより確実に情報提供(説明を読むまで発注できないなど)したり、大量購入の確認をしたりしやすい面がある」③販売規制により「つぶれるのは健全な業者。購入の道を失った患者が危険な個人輸入などに頼る可能性が大きい。規制は国内法に従わない事業者を繁盛させるだけで、危険を増大させる」④「処方箋などを含め、通信販売の発達は世界のすう勢であり、対応が遅れると後にノウハウをためた海外販売事業者らに席巻される。逆に日本の優れた薬をアジアなどに積極的に通信販売していく姿をみたい」などとしている。

 また、消費者の生の声やニーズを聞くために1月17日に都内・大手町サンケイプラザで開いた「一般用医薬品の通信販売継続および安全な販売環境の整備を求める緊急会議」での消費者の声として出席者の声を紹介。その中では、軽度な障害を持つ北海道旭川市の男性が「雪に閉じ込められスケートリンクのような道は障害者や高齢者にとって危険です。自宅で検索し、落ち着いて(医薬品を)選べるインターネットのシステムは私の生活の一部です」と規制に反対の意見を述べていた。また全盲のため盲導犬と暮らしている兵庫県神戸市内の男性は「盲導犬と一緒に店舗に行くことはできますが、説明書は読めません。ネットなら音声読み上げソフトを介して成分などを読むことができます」と現行でのネット販売を求めた。また、長年、原因不明の耳鳴りに悩まされ、症状は関西でのみ販売されている漢方薬でしか和らがないという東京都杉並区在住の男性は「ネットで購入できなくなるとわざわざ大阪にまで買いに行かなくてはなりません。購入の道を断たないで下さい」と現行の通販を切望していた。

 このほか、専門家の立場では、大阪府在住の薬剤師が「副作用は対面販売、ネット販売に関係なく、不幸にして起こるものです。販売時にどのような症状であれ、異常が見られれば服用を当然中止し、受診することを勧めているのは、どちらの立場でも同様であると思われます」と語った。

 医薬品の通信販売規制については、厚生労働省が2月6日に公布した省令で、副作用リスクの最も低い「第3類医薬品」のみについて認め、1類、2類医薬品は認めないとしている。その理由の第一は「安全性の確保」で、そのため「対面販売」を原則とした。

 厚生労働省ではこの省令の見直しも含め、通信販売のあり方を再検討しており、こうした課題解決への方策が求められている。厚労省の検討会は3月12日午前10時から都内の九段会館で2回目の会合を開き、前回の議論を深めることになっている。