国政政党の提案と責任 

2013年06月09日 17:18

 「急に持ち上がった話」「非常に突然の話」と会見中に、ほんとに突然の話だったことや内容に戸惑いさえあったのではと思わせる小野寺五典防衛大臣の日本維新の会提案に対する7日の記者会見での反応。

 「地元の反応、状況も少し見定めることも必要ではないか」と当事者である地元自治体と一体でないことへの慎重さもうかがわせた。

 日本維新の会の提案に対する本気度や真剣さは今後を見てみないと分からないが、提案はオスプレイ(米軍普天間飛行場配備のオスプレイ)の飛行訓練候補地のひとつとして八尾空港(大阪府八尾市内)を検討対象にというもので、八尾空港での飛行訓練が可能なのかどうか検討するよう国に求めるものだった。

 普天間飛行場が住宅密集地にあるのと同様、八尾空港も住宅がすぐそばにあり、自衛隊ヘリの騒音も住民らの負担になっている。そうした中での急な提案だった。

 日本維新の会の松井一郎幹事長は大阪府知事であり、橋下徹共同代表は大阪市長でもある。松井知事は八尾飛行場に近いところに住居があるらしく、飛行訓練が可能なことが分かれば自ら地元に理解を求めて働く意向を菅義偉官房長官らに伝えたらしい。菅官房長官が記者会見で明かした。

 橋下共同代表は政党の代表ではあるが、一方で、八尾市長と同じ大阪府下の一自治体の首長でもある。その立場を踏まえれば、総理や官房長官ら国に提案する前に、少なくとも当事者である田中誠太八尾市長に事前相談し、取り組みを共有することが必要ではなかったのか。

 「提案だけして、後は国に任せるというのは」と八尾市長が橋下氏らの行動に不快感と不信感を持つのはうなずける話だ。7日夕に松井幹事長は田中八尾市長と面会したが、田中市長は事前に相談しなかったことに改めて不快感をみせたという。

 小野寺防衛大臣も7日の会見で「恐らく菅官房長官も八尾空港ということ自体の意味合い、すぐには判断しかねることだろう」と自身も驚いたが、官房長官も驚いたのではないかとの思いを隠さない。

 小野寺防衛大臣は「八尾空港は国交省の管轄する空港で、自衛隊は一部を使わせて頂いているということなのだと思う」とし「飛行訓練は基本的にアメリカ側が運用の中で検討されていくことだと思うので、全体の中での判断や検討が必要なのだと思うが、沖縄の負担軽減につながるという全体としての動きは、これからも検討する必要があると思っている」と語り、本州での飛行訓練が岩国基地以外に広げていけるのかどうか、その可能性を探っていくことの必要性は肯定した。

 政府は八尾空港での飛行訓練が可能なのかどうかを米側との協議の中で検討すると同時に、可能性に目途が立てば、八尾市長はじめ八尾飛行場周辺住民らに協力や理解を求める場を設け、実際に動くことが求められるが、可能性があるのかどうかは早急にその目途を立てるべきだろう。

 住宅密集地で最初から可能性がないことを分かりながら提案したということなら、維新の会の提案の無責任さを指摘されても反論できまい。政策を提案した以上、国政政党として、維新の会にはその提案の行方と結果について最後まで責任を全うすることが求められる。政党の提案にはそれくらいの裏づけと重みがあってしかるべきだろう。こどもの思いつきや閃き程度のものであってはならない。(編集担当:森高龍二)