市町村把握 高齢者虐待での死亡 19年度27件に

2008年10月08日 11:00

 高齢者への虐待について、厚生労働省がまとめたところによると、19年度中に高齢者虐待で相談や通報を受けた件数は、擁護者に虐待の疑いがあるケースで1万9971件、養介護施設従事者などに虐待の疑いのあるケースは379件あり、それぞれ、前年度より1581件、106件と増加した。相談や通報に基づき虐待と判断されたケースは養護者によるものが1万3273件、養介護施設従事者などによるものが62件あり、いずれも前年度より704件、8件増加。虐待の類型、虐待を受けた人の性別、年齢、要介護度、認知症の程度などの状況は「昨年度とほぼ同様の傾向にある」と同省では分析している。

 また、市町村が把握した平成19年度の虐待等による死亡事例をみると「養護者による殺人」が13件、「介護放棄による致死」が7件、「心中」4件、「虐待による致死」が3件と、合わせて27件にものぼっていた。

 この調査は、全市町村(特別区を含む。19年度末1816団体)と都道府県を対象に実施。相談・通報窓口の設置と周知が、ほぼ全ての市町村で実施されていたことやと住民への高齢者虐待防止についての啓発活動が広がっていることなどを背景に、相談や通報件数が増えたとしている。

 虐待の事実が認められた事例では施設種別に、「認知症対応型共同生活介護」施設が30・6%、「特別養護老人ホーム」が27・4%、「介護老人保健施設」が14・5%の順になっていた。虐待では「身体的虐待」が最も多く77・4%、次いで「心理的虐待」が30・6%、「介護等の放棄」が16・1%。虐待されていたのは女性が8割を占め、年齢は80歳代が約4割。要介護度は3以上が約8割を占めていた。虐待者は、40歳未満が4割、職種は「介護職員」が8割を超える。

 また、養護者による虐待では、通報や相談者は「介護支援専門員等」が42・1%を占め、次いで「家族親族」が12・8%、虐待を受けている本人からが12・6%あった。

 虐待の内容では、「身体的虐待」が63・7%と最も多く、次いで「心理的虐待」38・3%、「介護等の放棄」28・0%、「経済的虐待」25・8%だった。

 虐待者との同居の有無では、同居が8割以上を占めた。世帯構成は「未婚の子と同一世帯」が34・5%と最も多く、既婚の子を合わせると6割以上が子と同一世帯。続柄では、「息子」が40・6%で最も多く、次いで「夫」15・8%、「娘」15・0%。

 虐待事例への市町村の対応をみると、「被虐待高齢者の保護と虐待者からの分離」が3割強。分離を行った事例では、「介護保険サービスの利用」が38・2%、次いで「医療機関への一時入院」が21・0%。分離していない事例では「養護者に対する助言指導」が48・6%で最も多く、「ケアプランの見直し」が28・4%で続いた。