NMKV企画の軽自動車は誰が主導して、何(誰)を救うのか?

2013年06月14日 15:14

 日産<7201>が大々的にぶち上げた新型軽自動車「DAYZ(デイズ)」が話題だ。生産は三菱自動車<7211>が行い、三菱ブランドから「ek ワゴン」としてリリースされたモデルだ。

 その前に、「NMKV」という会社を復習する。NMKVが設立されたのは2011年6月。日産自動車と三菱自動車が折半(資本金1000万円の50%をそれぞれ負担)してつくった会社だ。同社のHPには社員スタッフの写真と出身会社が掲載されている。資本金出資率と同じくセクションごとにスタッフ数もほぼ折衷している。

 設立の目的はNMKVがイニシアティブを取って、日産と三菱が持っているクルマ作りのノウハウを融合し、新しい軽自動車を企画開発してマーケットに送り出すことだ。要するに、「従来の三菱からのOEM供給による軽自動車では、日産ユーザー(ディーラー?)を満足させることができなかった」。だから、「商品企画から日産が口を出す(出せる)組織を作った」という具合に、会社設立当時のプレスリリース(の裏側)を読んだのは筆者だけではないはずだ。

 さて、そこで出来上がった「デイズ」のどこにNMKVらしさが現れたのかを見る前に、デイズ登場以前の軽自動車の販売状況を確認する。

 2012年4月〜2013年3月の軽自動車年間販売ランキング(全国軽自動車協会連合会調べ)のベスト3は、「ホンダN BOX」23万6287台、「スズキ・ワゴンR」19万9122台、「ダイハツ・ミラ」19万490台。次いでタント、ムーヴのダイハツ勢が続き、6位のスズキ・アルトまでが10万台の大台に乗っている。その次、第7位に日産モコ(スズキからのOEM供給車)が登場するも販売台数は6万7513台と6位から大きく水をあけられ、2012年11月デビューのホンダN ONE(5万5309台)の追撃から逃れるのが精一杯だった。更に、三菱からOEM供給されていていた日産オッティ(旧ekワゴン・ベース)に至っては6475台と惨憺たる様相を呈していた。

 そこで今回のNMKVの登場だ。NMKVは企画会社だ。生産設備などは無い。日産としては、独自に軽自動車生産に乗り出す(工場の建設など)よりも、NMKVを三菱の余剰設備を動かせる(使える)企画会社にしたかった。三菱としては、2000年の「リコール隠匿事件」以降の危機的状況を乗り切るために日産の支援は必須。NMKVによる軽自動車の企画生産で水島工場を稼働できることが大きなメリットとなる。

 そこで「日産デイズ」の商品性をチェックする。価格は高めで106.785〜156.765万円。セールスポイントは幾つかある。まず、デザイン。なかでも「デイズ・ハイウェイスター」だ。軽自動車だけど雰囲気は日産最上級ミニバンの「エルグランド」である。メッキを多用した押し出し感の強いフロントマスクがポイント。ただし、エルグランド風のハイウェイスターは高い。122.01〜149.73万円(未発売のターボ車を除く)なのだ。普通の地味な顔付きの「デイズ」グレード「J」「S」は装備がお粗末過ぎてカタログ掲載(するだけの)モデルとしか思えず、普通のデイズは「X」を売る方針らしい。が、その「X」も122.035万円と相当に高価な軽カーなのだ。さらに8月発売のターボバージョンは148.47〜156.765万円だ。
 
ただし、エクステリア以外のメカニズム全般に日産らしさはない。ノートで評判の「エコスーパーチャージャー」も無い。中身は三菱自動車製の軽自動車だ。あるのは、後付け可能な装備である「アラウンド・ビューモニター」などの便利装備で、それも上級グレードだけの装備だ。現状の日産車ラインアップで、日産ノートは124.95〜167.475万円(FF車)、日産マーチは103.635〜147.105万円(FF車)という序列。この順列を壊しかねない「デイズ」の出現。自社ブランド(同ディーラー内)での競合が極めて心配になる構図だ。

 日産デイズの月販目標8000台である。これが高い目標なのか、簡単に達成できる数字なのか、NMKVのマーケティング手腕が問われる1台となりそうだ。
 
 ちなみに、「車両価格140万円までで日産車を購入しろ」という指令ならば、筆者なら「ノートX」(129.885万円)にする。このモデルを買ってメーカーオプションのVDC(8.4万円/ヴィークル・ダイナミクス・コントロール:横滑り防止装置)を装着する。それでもVDCが付いた「デイズ・ターボ」よりも安い。しかも、「デイズ・ターボ」のJC08燃費は23.4km/リッターで、「ノートX」は22.6km/リッターだ。
 
 加えて、ターボ車以外の日産デイズにVDCは装着していない(オプションでも装着出来ない)。ご存じのように横滑り防止装置は2013年秋以降の新型車には装着が義務化される。それ以前のクルマは翌年秋まで装備しなくても“お咎め”はない。(編集担当:吉田恒)