日本人ライダー優勝でモトクロス人気復活か?

2013年06月16日 18:57

640-5YZ

2013年7月10日発売YZ450F(メーカー希望小売価格 税込87万1500円)

モトクロスとは、未舗装の起伏に富んだ周回コースでタイムを競うオートバイ競技のこと。フリースタイル・モトクロスは、そのモトクロスから派生したもので、コース上に大きなジャンプ台が設置され、ジャンプでの空中トリックを競うもの。審査基準は「バリエーション」「難易度」「スタイル」「コースの使い方」「エナジー」の5項目で行ない、1対1で争われる。ダブル・バックフリップ(後方2回転宙返り)など、大迫力の空中戦は見る者をハラハラ、ドキドキさせる、究極のエクストリームスポーツだ。

 6月1日に、国の特別史跡である大阪城跡、西の丸公園特別会場で開催された「X-Fighters」では、大阪出身の東野貴行選手が、日本人初の優勝を果たしている。大阪城をバックに繰り広げられた、素晴らしいトリックの数々に、1万1000人の観客は魅了され、橋下大阪市長も観戦するなど、モトクロスブームの復活を予感させた。

 フリースタイル・モトクロスという、新たなカテゴリーが脚光を浴びるなか、ヤマハ発動機<7272>が、モトクロッサーのフラッグシップモデルであるYZ450Fと国内で人気のクラスに属するYZ250Fを同時にフルモデルチャンジさせた。ちなみにモトクロッサーとは、保安部品が付いていない競技車両のことで、公道走行はできない。それだけにメーカーの技術の粋を尽くした、最新、究極のレーシングモデルといえる。

 2009年に発表された先代YZ450Fは、フューエルインジェクション(FI)をYZシリーズで初めて搭載したモデルで、後傾させたシリンダーに、前方ストレート吸気、後方排気という効率的で画期的なエンジンレイアウトを採用し、当時の既成概念を覆したものだった。

 今回の2014年モデルでは、両モデルともに新エンジンを搭載している。前方吸気、後方排気のレイアウトは先代モデルYZ450Fで採用したものを進化、エキゾーストパイプはループ状にシリンダーをグルっと取り巻く独特なデザインとし、十分な排気管長確保による排気脈動効果によって、優れたパワー特性をもたらしている。またピストン形状や吸排気ポート形状、点火&燃料マップなど性能パーツも一新させた。これにより1~2速ではトルク感があり、扱いやすく、3速以上ではパワー感が伝わる特性となっている。

 トピックとしてはモバイル端末のような“YZ Power Tuner”を同梱していること。これによりコースや好みに合わせ燃料噴射量や点火時期を調整可能にしている。パソコンをコースに持っていかなくても、カプラーオンするだけで、瞬時にセッティングできる優れモノなのだ。

 ヤマハのオートバイ製造は、かの名車である「YA-1」からスターとした。その後、1973年にリアのショックアブソーバーを1本にした画期的なモノクロス・サスペンションを開発。モトクロッサーは長い間、2ストロークマシンが主流だったのだが、1997年には軽量な4ストロークのモトクロッサーを登場させた。このように、革新的なモデルを市場に投入し、世界を牽引するだけの高い技術力を持っている同社は、レースシーンのみならず、スクーターからビッグバイクまでその活躍の場を広げるにいたったのは納得がいくところ。

 「通常エンジンは前方に傾けているのですが、2014年モデルYZ250FはYZ450F同様にエンジンの頭を車体の中心側、つまり後方に傾けたことでマスの集中化を図り、非常に効率の良いレイアウトになっています。また、新設計フレームとの相乗効果でコーナリングスピードがさらに上がっています。ただ単に速いだけではなく、扱いやすさを両立させることに注力しました。次世代のモトクロスマシンをつくりあげる事ができたと思います」と、今回のYZ450F、YZ250Fの開発にあたっての狙いをヤマハ担当者は語る。

 モトクロスの競技中は、ほとんど中腰の姿勢となり、体重移動でマシンをコントロールする。激しいコーナリングやジャンプで、コースコンディションは刻一刻と変化していくので、かなりの体力を要するスポーツとも言われている。だからこそ、“扱いやすさ”というのが重要なのだ。小柄な日本人選手にとって、暴れるマシンをコントロールするのは、どうしても体格的に不利なのは否めない。ところが最近では「X-Fighters」での、東野貴行選手の優勝や、全日本モトクロス選手権シリーズで、自身初のトップクラスIA1で優勝を飾ると、続いて2勝目をあげた平田優選手の活躍など、若手有望株が育ってきているのだ。

 北米や欧州ではモトクロスは根強い人気があり、日本でもかつて80、90年代では、球場をコースにした、ジャパンスーパークロスが大人気で、モトクロッサーのほとんどは日本製という寡占状態も長らく続いた。これからはマシンだけでなく、日本人選手が世界を席巻する日が訪れることを期待したい。(編集担当:鈴木博之)