地球の温暖化がアジア圏域や日本国内に及ぼす影響などについて環境省の「温暖化影響総合予測プロジェクト」が今世紀末までを対象として、水資源、森林、農業、沿岸域、健康といった分野で、その影響をまとめたところによると、森林ではブナ林をはじめチシマザサ・ハイマツ・シラベ(シラビソ)などの分布適域が激減し「今世紀の中頃以降、白神山地もブナの適地ではなくなる」としたほか、マツ枯れの被害リスクが拡大し、1度から2度の気温上昇により、現在はまだ被害が及んでいない本州北端まで危険域が拡大すると警鐘している。
また、農業においても、コメ収量は北海道や東北など北日本では26%から13%、増収なるが、近畿以西の南西日本では現在とほぼ同じかやや減少する(5%の減収)。あわせて「コメの品質低下や他の穀物や果樹などの生産適地の北上や減収によって農業に大きな影響が及ぶ。気候変動、人口の増加による需要増、投機による価格高騰、バイオ燃料への転用などが重なれば、日本への食料供給に対しても影響が生じる可能性がある」とした。
沿岸域への影響では「海面上昇と高潮の増大で、現在の護岸を考慮しても浸水面積・人口の被害が増加する」とし「特に瀬戸内海などの閉鎖性海域や三大湾奥部では古くに開発された埋立地とその周辺は浸水の危険性が高い。また海面上昇は汽水域拡大による河川堤防の強度低下や沿岸部の液状化危険度リスクを増大させる」とし、高潮による浸水については3大湾奥部と西日本(中国、四国、九州)で2000年では2万ヘクタール、29万人のエリアだったものが、2030年では2万9000ヘクタール、52万人エリアに、2100年には5万8000ヘクタール、137万人エリアに及ぶとしている。海面が30センチ上昇すれば、砂浜が失われることによる価値損失が1兆3000億円に上る(1平方メートルあたり1万2000円で計算)と指摘。
健康面では熱ストレスによる死亡リスクや熱中症患者発生数が急激に増加し、とりわけ高齢者へのリスクが大きくなる。また、気象変化による大気汚染(光化学オキシダント)の発生が増加。感染症(デング熱・マラリア・日本脳炎)の媒介蚊の分布可能域も拡大するなどの影響の大きさをあげ、警鐘を鳴らしている。
このプロジェクトは平成17年から3年間を前期研究期間として研究してきたもので、その成果をまとめ、公表したもの。